神に選ばれなかった者達 前編

二度も雑貨屋さんに行ったせいで。

アパートの近くまで帰ってきた時には、既に辺りが暗くなりかけていていた。

でも、今日の私は急いでいなかった。

だって、お兄ちゃんにはちゃんと、「遅くなります」って連絡を入れてるから。

お兄ちゃんもきっと、心配せずに待っててくれるだろう。

…と、甘く考えていたのが、既にフラグだったというのだろうか。

自宅アパートが近づくにつれて、何処からか、やまびこのような叫び声が聞こえてきた。

「…みー…。…ぞみー。…の…みー!」

…。…うん。

何だろう。聞き覚えがあるような…ないような。

…やっぱりある。

と言うか、聞き覚えしかない声。

「…ぞみー!…のぞみー!」

…こ、この声は。

「のぞみー!のぞみー!!何処ーっ!?」

や、やっぱりお兄ちゃん…!

声のした方に駆け出すと、血相を変えて私の名前を連呼しながら、髪を振り乱して走り回っている…。

…お兄ちゃんを発見。

あ、あの人は…!

「ママー。あの人何?」

「しっ、見ちゃいけません」

通りすがりの親子が、そんなお兄ちゃんを変人でも見るように見ていた。

…恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうだった。

完ッ全に、不審者。

「お兄ちゃん!」

「はっ!この声は、のぞみ!?」

お兄ちゃんが、しゅばっ、とこちらを向いた。

そして。

「のぞみ〜!無事で良かった!!」

私を見るなり思いっきり破顔して、こちらに飛びついてきた。

あぁ、もう…!

「お兄ちゃん!一体どうしたの?こんなところで何やってるのよ」

恥ずかしいったらありゃしない。

一体いつから、私を探して叫び散らしてたの?

「だって、のぞみが遅くなっても帰ってこないから、心配で…!」

「だから、帰りが遅くなるって連絡したでしょ?」

「うん。でもあんまり遅いから心配で」

「…」

…私、一体何の為に連絡したの?

「しばらくは家で待ってたんだけど、のぞみが帰り道に暴漢に襲われたらどうしようかと思って…」

「そんな、大丈夫よ…。私を襲う暴漢なんていないわよ」

「何を言うんだ!だって、のぞみはこんなに可愛いんだよ?道行く変態共が、のぞみをいやらしい目で見てるかと思うと…お兄ちゃんはじっとしていられないよ」

…過保護。

過保護にも程があるわ。

「大丈夫だった?のぞみ。変な奴に襲われなかった?」

「…大丈夫よ…」

今のところ、お兄ちゃんが一番の「変な奴」よ。

「そっか、良かった!もう5分、のぞみが見つからなかったら、知り合いのマフィアに頼んでのぞみを捜索してもらうところだったよ」

「…」

…私、もう放課後にお友達と遊びに行くの、やめようかな。