神に選ばれなかった者達 前編

駆け足で戻ってきたのは、さっきの高級雑貨店。

別に走って戻らなくても良かったんだろうけど。

そうと決めたら、急いで戻らないと、先に他の人に買われちゃう気がして。

再び入店。

そして真っ先に、さっきの割引きワゴンセールに向かう。

「あ、良かった…」

まだあった。

さっき見ていた、定価3000円、50%オフで1500円のグレーのマフラー。

一度は背を向けて、お店を出てしまったけど。

でも、やっぱり…。どうしても…。

「…よし」

意を決して、私はそのマフラーをレジに持っていった。

清水の舞台から飛び降りる気分。

「これ下さい」

「ありがとうございまーす」

さっきと同じ店員さんが、笑顔で迎えてくれた。

「こちらセール品なので、ラッピングは出来ないんですがよろしいですか?」

とのこと。

「はい、いいです」

ハナから、ラッピングなんてしてもらうつもりはなかった。

だって、追加料金200円なんだもの。

1500円だけでもお高い買い物なのに、これ以上高くなったら、さすがに手が出ない。

私、ちゃんとエコバッグ持ってるから。

お会計を済ませて、マフラーを丁寧に畳んで、エコバッグに入れる。

…買っちゃった。

「ありがとうございましたー」

店員さんの声に見送られ、私は雑貨屋さんを後にした。

…お兄ちゃん、これ喜んでくれるかなぁ。

「喜んでくれると良いなぁ…」

お兄ちゃんが喜ぶ姿を想像して、微笑んでしまった。

…なんて、呑気なことを言っていられたのは、この時までだった。