神に選ばれなかった者達 前編

動くことは出来ず、かと言ってこの身体では、逃げることも出来ない。 

「がはっ…げほっ…」

ぬるりとした熱い塊が、喉の奥から込み上げてきた。

軋む身体の痛みを堪えながら、俺は込み上げてきたものを、柔らかい土の上に吐き出した。

見たこともない、大量の血の塊だった。

口に中に、苦い血の味が広がった。

「…は…。…はは…」

あまりの馬鹿馬鹿しさに、思わず笑ってしまった。

…こんなことって、あるのか?

ゾンビに食べられなくても、校舎のベランダから飛び降りて死ぬなんて。

馬鹿みたいじゃないか。

ゾンビから逃げることに精一杯で…。

確かにゾンビからは逃げられたけど、飛び降り自殺したんじゃ何の意味もないじゃないか。

おまけに、即死出来なかったせいで、これから絶命するまで、じっくりと地獄の痛みを味わわなきゃいけない。

これなら、ゾンビに食われた方がマシじゃないか。

少なくとも、じわじわ殺されることはない。すぐに殺してもらえるんだから。

何処に逃げたら良いんだ。俺は一体どうしたら良いんだ。

どうして夢の中で…こんな目に遭わなきゃいけないのか。

苦しみを終わらせる為に、せめて自分で自分の命を断ちたかった。

でも、身体にまったく力が入らなかった。

俺には何も出来なかった。

ただ、待っていることしか出来なかった。

じわじわと、肉体がその機能を停止するまで。