神に選ばれなかった者達 前編

そのお値段、なんと3000円。

さ、3000円って…。

…100円ショップの手袋、30枚買えるじゃない。

たった一枚の手袋が…3000円も…。

なんてお高い…。やっぱり高級店だわ、ここは…。

とんでもないとばかりに、私は手袋を商品棚に戻した。

はぁはぁ。まだ息が荒いわ。

こんな高級手袋、一度買ってしまったら、二度と100円ショップに戻れない。

なんて恐ろしいお店なの…。

…しかも、恐ろしいのはそれだけではない。

「あ、見てマグカップ」

「ほんとだ。今の時期だと良いかもね」

あろうことか友達は、マグカップやお皿等の、食器売場に向かった。

何なのこのお店。

手袋が売ってるかと思ったら、食器まで売ってるの?

一体何屋さん…?…あ、雑貨屋さんってさっき言ってたっけ…。

…って、呑気なこと言ってる場合じゃない。

「ちょ、ちょっと待って…!」

私は、慌てて女友達を止めた。

…止めた…のは、良いんだけど…。

「?何、のぞみ?」

くるりと振り向く友達。

「え、あ、あの…」

…あ、危ないんじゃないの?

だって、食器よ?

落としたら割れるのよ?

うっかりぶつかって、がしゃーんぱりーん、なんてことになったら目も当てられないでしょ?

迂闊に入って良いエリアじゃないと思うの。

…しかし、友達はそんなこと、全く気にしていないようで。

けろっとして、当たり前のように食器売り場に入っていた。

…だ、大丈夫なの?本当に…?

「?どうしたの?」

「え、いや…な、何でもないわ…」

「あ、そう」

私一人が、売り場の前で立ち尽くしている訳にもいかず。

私も友達の後を追って、恐る恐る食器売り場に入った。

うわぁ…。歩きにくい…。

思わず、歩幅がめちゃくちゃ小さくなってしまう。

挙動不審。

でも、仕方ないじゃない?

うっかり落としたり汚したりしたら、きっと弁償させられるよね?

商品全部、ガラスケースに入れてくれたら良いのに。

スラム街で、こんな風に商品を剥き出しにして陳列してたら。

万引き犯に全部万引きされて、あっという間にお店が潰れてしまうことだろう。

そうならないってことは…この辺は治安が良いんだろうな…。

…その証拠に。

「見て、これ可愛い」

「私はこれが好きだなー」

あろうことか、友達は売り物のマグカップを手に取って眺めていた。

…あなた達、よく商品に触る勇気があるわね。

それ、落っことしたら弁償させられるのよ。怖くないのだろうか…。