神に選ばれなかった者達 前編

叔母と従姉妹の会話を聞いて、俺はとても…そう…見捨てられたような、そんな気持ちになった。
 
今更、何を言ってるんだ。俺は。

そんなことは…とっくの昔に分かっていたことじゃないか。

この期に及んで俺はまだ…期待していたのでも言うのか。

もしあの「身代わり」が、母の期待に応えられなかったら。

自分のことを、母が呼び戻してくれるかと。

今度こそ、母の期待に応えられるように…もう一度チャンスをくれるかもしれない、と。

そんなことを…そんな有り得ないことを…心の底で、期待していたんだろうか。

…馬鹿みたいだ。

その必要はない。

俺の「身代わり」は、俺よりずっと優秀だ。

俺の時の失敗体験をもとに、反省を活かし。

今度こそ、母の理想通りになってくれるだろう。

…だから俺はもう、必要ない。

こうして叔母の家に預けられて、その叔母にまで厄介者扱いされている。

…分かっている。俺は邪魔者で、そして無価値な人間なのだ。

嫌と言うほど思い知らされている…。

「…」

俺は自室に戻り、ベッドに横たわった。

眠ることで、現実から逃げられる者は幸せだな。

俺の場合、眠ることで、余計に過酷な現実が待っている。

何処にも逃げ場がない。何処にも…。

割れそうに頭が痛いし、そして認めたくないが、同じくらい心も痛かった。

涙は出なかった。

俺は昔から、あんまり涙というものが出ないのだ。

人間として必要なものが、生まれつき欠けているのかもしれない。

…きっとそうなんだろう。

だからこそ俺は、生贄に選ばれたのだろう。

絶望する必要はない。分かっていたことだ。最初から…。

自分が無価値なのも…誰にも必要とされていないのも…生きている意味などないことも。

互いに押し付け合って、最後に残る…花一匁の最後の一人だってことも…。

分かってるけど。全部、分かってはいるけれど…。

…でも…。

「…疲れた、な」





このまま目を閉じて、一生目が覚めなければ良いのに。

そのせいで、例え永遠に悪夢の中から抜け出せなくなるとしても。

どうせ現実だって同じくらい酷い悪夢なんだから、目覚めなくても同じことだろう?