神に選ばれなかった者達 前編

「ほんと、迷惑で仕方ないわ…。このまま不登校になって、引きこもりにでもなったらどうすれば良いの?」

「…さぁ…。その時は伯母さんに返したら?製造者責任でしょ」

…眞未にとっての、伯母さん。

それはつまり、俺の実母のことだった。

「無理無理。あの姉さんが、今更あの子を引き取るもんですか」

「まぁ、そうだよねー。…あの人じゃ…」

「あぁそうだ、そういえば姉さんのとこの子…」

「あぁ、新しい方?」

「そう、その子」

新しい方、という言葉に、俺はどきりとした。

心臓を摑まれたような気分だった。

これ以上聞いちゃいけない。これ以上聞いたら、俺は、

「あの子、◯◯の私立小学校に合格したんですって」

「へぇー、あそこって、めちゃくちゃ頭良い学校だよね?」

「そうよ」

その学校は、地方どころか、国内でも有数の優秀な私立小学校だった。

小学校受験では、最難関と言っても過言ではない。

「でも、そこって県外だよね?どうやって通うの?」

「それが、新幹線で通うらしいわよ」

「ふーん。さすが、お金持ちは考えることが違うね」

「そうね。響也で失敗したから、今度こそって思ってるんでしょ」

…。

…それを聞いて、俺は膝から崩れ落ちそうになるのを、必死に堪えた。

…そうか。あの子…。

…母のもとに来た「俺の代わり」のあの子は。

今度こそ、母の望む理想の子になる為に、順調に母の敷いたレールを歩んでいるらしい。

俺でさえ、高嶺の花だった私立小学校に入学して。

そしてそこで、母が望む通りの成績を取り、母が望む通りの人生を歩む。

…果たせなかった、俺の代わりに。

「…」

これ以上、二人の会話を聞いていたくなかった。

俺は、手負いの動物のようによろよろと、自分の部屋に戻った。

最早薬のことなんてどうだって良い。

ただ、その場から逃げたかった。