神に選ばれなかった者達 前編

理解が追いつかないままに。

黒衣人間達は、手術台の上で石のように固まっている俺を、じっと見下ろし。

「ダウヨノウョジウョジハカイセ」

「ナタッナクシナトオクヤウヨ」

「ルキデガツュジュシデレコ」

各人が、それぞれそう呟いた。

その声もまた、俺には耳元で叫ばれているかのように大きな声のように聞こえた。

自分が今どんな状況なのか、どうしたら良いのか、分からない。

でも、今の俺に何が出来るというのだろう。

身体を動かすことが出来ない。言葉を発することも出来ないのに。

「ウヨシトルメジハ」

黒衣人間が、鋭利なメスを手に取った。

そのメスが、俺の身体に触れた瞬間。

鋭敏に研ぎ澄まされた痛覚が、電流のように全身を貫いた。

メスが触れたのは、表皮の薄い部分だったに違いない。

だから傍目に見れば、紙で指を切った、くらいの小さな傷だったはずだ。

それなのに、感覚が研ぎ澄まされた状態の俺は、まるで焼けた石を押し付けられたかのような衝撃と。

そして、思わず悲鳴を上げてしまいそうなほどの激痛に襲われた。

でも、声帯が薬か何かでやられているのか、悲鳴を上げることさえ出来なかった。

身を捩って逃げることも、せめてもの抵抗として叫ぶことも出来ない。

涙さえ出なかった。まるでその機能が失われているかのように。

だから、俺に出来ることと言えば。

手術台の上で、動くことも叫ぶこともなく、全身を苛む痛みに耐えることだけだった。

…でも、それは人間が耐えられる痛みの限界を、遥かに超えていた。

昨日のそれとは、比べ物にならない。

ゾンビに食い殺される痛みが、可愛らしく思えるほど。

僅かにメスが身体に触れる度に、痛みのあまり失神した。

そしてまた触れる度に、激しい痛みに意識を取り戻し、また失神した。

延々と、それを繰り返した。

地獄。まさにこれは地獄の苦しみだった。

人間に対する扱いではなかった。

今の俺は、ただの実験体。

何をしても良い。どんなことをしても。

切り刻まれ、痛めつけられる定め。

俺は両目を大きく開いたまま、覚醒と失神を繰り返し続けた。





…命が終わるまで、ずっと。