神に選ばれなかった者達 前編

誘ってくれたのは嬉しいが。

でも、俺がついていったら、邪魔以外の何物でもないだろう。

折角の、家族水入らずの外出なのに。

「いや…俺は遠慮しておく」

「え…。何で?」

「…実は、あまり体調が優れなくてな」

これは嘘じゃない。

昨晩、人体実験の為にメスで身体を切り刻まれたせいだろうか。

視界にノイズが走るだけではなく、今日は頭痛までセットだ。

「え、そうなのか?…大丈夫?風邪?」

悪夢のせいだ、と言いたいところだが…。

言ったら余計な心配をかけてしまいそうだから、やめておこう。

「…少し疲れただけだ。心配要らない」

「…そっか…」

眞沙は、気まずそうに視線を逸らし。

そして、ふと俺の手元のスマホを見下ろした。

「…あれ?響也兄ちゃん、それ…ネットの掲示板?」

「…ん?あぁ…」

そうだな。

果たしてネット…なのかは分からないが。

結局この掲示板は、一体何なんだろうな。

「珍しいな、響也兄ちゃん、そういうの興味あったんだ」

…別に興味がある訳ではないんだが。

勝手にスマホにインストールされて、何度消しても消えなかっただけだ。

生贄同士で連絡を取るのに便利だから、使わせてもらっている。

「あぁ…。…まぁな」

「でもそういうの、匿名で書き込めるから、適当なことを書き込んで人を傷つける人が多いって聞いたことがある」

それはもっともな話だが。

この『処刑場』に生贄のメンバーだけだから、その心配はないだろう。

「響也兄ちゃん、純粋で騙されやすいからなぁ」

「…」

「気をつけてくれよ?くれぐれも」

…俺は騙されやすいのか。そうなのか?

それは初めて言われたな…。

「…そうか…。…気をつけるよ」

「うん、それじゃ…。あ、何かお土産買ってくるよ。何が良い?」

「何でも良い。…俺のことは気にするな」

家族水入らずで楽しんできてくれ。

「分かった。具合、悪くなったら連絡して教えてくれよ?」

「あぁ…」

「じゃあ、行ってくる」

そう言って、眞沙は部屋を出ていった。

…あいつは良い奴だな。

俺を、まるで家族みたいに扱って…。

…だからこそ、上手く振る舞えない自分が不甲斐ない。

正直なところ俺は、今に至っても、家族というものが一般的にどんなものなのか、分かっていないのだ。