神に選ばれなかった者達 前編

…気がつくと、俺はまたしても教室の中に立っていた。

今夜ばかりは、これは一体、と自問する必要はなかった。

…また、なのだ。

「…くっ…!」

また、俺は同じ夢を見ている。

どうやら寝る前のストレッチも何も、意味はなかったようだ。

思わず身を竦ませ、その途端に、また例の音が…。

ドン、ドン、とゾンビが扉を叩く音が聞こえ始めた。

あぁ、また…。

「…!」

逃げるか、扉を押さえるか、俺は一瞬迷った。

でも、どちらにしても、結局はゾンビに捕まってしまうことを、昨日までの経験で知っている。

ならば、逃げることにも立ち向かうことにも、意味なんてないような気がした。

そうやって、躊躇している間に。

ついにゾンビが扉を壊して、教室の中に入ってきた。

これまでの二日のように、大きな恐怖は感じなかった。

何処か他人事みたいだった。

何度も見たビデオを、もう一回見せられているような…。

…しかし。

「…っ!!」

噛みつかれたその痛みは、何度経験しても慣れるものではなかった。

これだけは、絶対に、永遠に慣れることは出来ない。

ゾンビに噛みつかれて、俺はようやく我に返った。

咄嗟に、俺はゾンビを突き飛ばして走った。

噛みつかれた横腹から、ボタボタと大量の血が溢れ。

その血が、教室の床に赤い水玉模様を作っていった。

逃げ出して、向かう先がある訳ではなかった。

内臓が一部飛び出したままの横腹を押さえて、夢中でベランダに飛び出した。

冷静に考えたら、この状態で逃げられるはずがないことは、簡単に分かったはずだ。

でも、とにかく襲いかかる死の恐怖から逃げることしか、考えられなかった。

全速力で数秒、走った…つもりだったが。

失血のせいで、頭がふらふらした。足が縺れた。

これ以上走れなくなって、俺はその場に崩れ落ちた。

そんな俺を、ゾンビは悠々と追ってきた。

「あぁ…。…くそっ…」

…また、駄目なのか。