神に選ばれなかった者達 前編

俺は、そのリネン類の山を掻き分けた。

「き、響也くん…?」

「ここに隠れれば、少しは安全だろう」

少なくとも、ベッドの下よりは安全なはずだ。

このクローゼットにしまい込まれたリネン類は、埃を被っていた。

お陰で埃っぽいことこの上ないが、しかし、埃を被っているということは、長らく使われていないという証拠だ。

隠れるには最適だろう。

少々窮屈ではあるが…小柄なみらくなら、何とか入れるだろう。

「ほら、ここに入って」

「こ、ここに?」

「あぁ」

みらくは戸惑いながら、クローゼットの中に入った。

そして、身を縮こませて体育座り。

その上に、埃を払った黒いリネン類の山を被せる。

「う、うっぷ。変な匂い」

「息、苦しいか?」

「だ…大丈夫」

リネンの山に隙間を作って、空気が通る穴を開けた。

…よし、これで大丈夫だろう。

窮屈そうではあるが、安全の為に我慢してくれ。

「じゃあ、行ってくる。そこで待っててくれ」

「ちょ、ま…!響也くんも一緒に、」

「さすがに俺は、そこには入れないぞ」

「そ、そうだけど」

小柄なみらくだから、何とかすっぽり入れたのだ。

多分俺だったら、はみ出る。

とてもじゃないが、二人分のスペースはない。

「じゃあ、私も一緒に…」

「良いか、何があってもそこから出るな。危険だからな」

「…響也くん…!」

「約束してくれ。何があってもそこから出ないと」

現状、ここが一番安全な場所なんだ。

ここから出てしまったら、守ってやれる自信がない。

「…良いか?」

「…うん、分かった」

「…よし」

なら、俺も安心して行くとするか。

…安心…出来るかどうかは分からないが。

「じゃあ、行ってくる」

俺はそう言って、クローゼットを覆い隠す黒いカーテンを引いた。

そして、手術室の扉に向かった。