神に選ばれなかった者達 前編

…さて、気を取り直して。

「…俺は、少し出掛けてくる」

「えっ?」

スッと立ち上がると、みらくが一瞬にして青ざめた。

そして、何を勘違いしたのか。

「い、良いよ!明るい話…面白い話出来なくても、出ていくことないじゃない」

「え?いや、それは関係ない」

別に、スベったことで空気が氷点下になったから、責任を取ってこの場から退散しようとしてる訳じゃないぞ。

「いつまでも…隠れている訳にはいかないだろう」

「…それは…」

出来れば、他の『処刑場』メンバーと合流したい。

お互いに情報交換をして、この病院をどうやって攻略するか話し合いたい。

それに…どんな敵が相手なのが、自分の目で確かめたいというのもある。

…俺だって死ぬのは嫌だが、でも相手の姿を見ずに戦うことは出来ないから。

逃げていても何も解決しないことは、前回のゾンビ戦で嫌と言うほど学習した。

「でも…それは分かるけど…でも、危ないよ…」

「…承知の上だ」

危ないのは分かってる。

でも、虎穴に入らずんば虎子を得ず、だからな。

「お前は来なくて良い。ここに隠れていろ」

「だ、だけど…」

「それに、ここだって100%安全とは限らないんだぞ」

「…え」

この悪夢の中において、安全な場所なんて存在しない。

今のところ、この手術室は俺達以外無人だが。

夜が明けるまで、ずっと安全だという保証はない。

いつ、バケモノ達が手術室に入ってくるか、分からないのだ。

俺が偵察に出ようとしているのは、それが理由でもある。

今より、少しでも安全な場所を探す為に。

…出来れば、みらくが隠れられる場所を。

「俺が行ってくる。だから…お前は待っててくれ」

「で、でも。ここだって安全とは限らないんだよね?危険を犯すのは響也くんだって同じだよね?それなら…!」

「あぁ…確かに。…それじゃあ…」

俺は、手術室の中をぐるりと見渡した。

そこに、丁度良さそうなものを見つけた。

「私も一緒に、響也くんの、」

「ここに入ってくれ」

「…は?」

俺は、手術室の隅っこに。

黒いカーテンがかかった、簡易クローゼットを見つけた。

カーテンを引いてみると、黒くカビたシーツや枕カバーなどのリネン類が、雑多に放り込まれていた。

お、これは丁度良い。