神に選ばれなかった者達 前編

みらくの落胆ぶりは、酷いものだった。

手術室の床に座り込み、体育座りをして俯いていた。

「…そんなに心配するな」

俺は優しくないし、気が利くタイプではない。

だから、こういう時どうやって慰め、励ましたら良いのか分からない。

みらくがどんな言葉を求めているのかも分からないが。

でも、これだけは言える。

「お前は一人で戦ってるんじゃない。今は、こうして俺が傍にいる」

「…響也くん…」

「お前のことは、可能な限り俺が守る。…保証は出来ないが」

「…君って人は…」

みらくは、ぷっと噴き出すように笑った。

…ようやく笑ったな。

違いの分からないピンクの化粧品を塗りたくるより、笑顔でいる方がずっと魅力的だと思うぞ。

「そこはさぁ…キリッとして、『お前のことは俺が絶対に守ってみせる』って断言するところじゃないの?」

「世の中に絶対はないだろう。保証出来ない約束をするべきじゃない」

それは不誠実というものだろう。

出来ないことを出来ます、とは言わない方が良い。

言葉には責任というものが伴うからな。

「締まらないんだから…まったくもう…」

「それは済まなかったな…」

「ううん…。…ありがと、響也くん…。ちょっと元気出た」

そうか。それは何よりだな。

「励まされてばっかりだね、君には…」

「そうか?」

「君みたいな優しい人が居るから…。つい、甘えたくなって…。自分でも、駄目だって分かってるのに…」

…。

…随分と切実な悩みだな。

「響也くんは…私に腹が立たないの?」

「…何で?」

別に腹が立ったことはないが。

そもそも、他人に対して腹を立てた記憶がない。

他人が自分に腹を立ててることは何度もあったが。

「もー…。…何でそんなに優しくしてくれるんだか…」

「…さぁ…。…何でだろうな?別に優しくしている自覚はないが…」

強いて言うなら…そうだな。

「価値のあるものを守ることで、自分も価値のある『何か』になれるような気がするから…だな」

「…」

俺がそう言うと、みらくは驚いたようにこちらを見上げた。

…俺はまた何か、変なことを言ったか。

「…何それ?それじゃまるで、今現在君に価値がないみたいじゃないの」

「…そうじゃないのか?」

「そんなことはないでしょ」

「…」

そう言ってくれるのは嬉しいが、現状、自分に何かしらの価値があるとは到底、思えないんだがな…。

何も卑屈になってる訳じゃない。相対的に考えた結果である。