神に選ばれなかった者達 前編

「病院…なの?」

「あぁ。病室らしき部屋がいくつも見受けられたし…」

しかし、ここが病院であるという何よりの証拠は、この部屋にある。

「これだ」

「え?」

「見覚えがないか?」

俺は、みらくが隠れている大きなベッドを指差した。

ベッドの真上は、カサのついたハロゲンランプ。

そして…よく見たら、ベッドには手足を拘束する為の拘束具まで付けられている。

更に、部屋の中には、用途が分からない数々の機械が。

これは恐らく医療機器なのだろう。…俺には使い方が分からないが。

「これ…手術台…?」

「そうだろうな」

ベッドだと思っていたが、これは手術台だ。

つまり、ここは…手術室なのだ。

手術室があるということは、病院で間違いないだろう。

「…と言うか、分かってて隠れてたんじゃないのか?」

「えっ…。そういう訳じゃないよ。ただ、怖くて…。何処でも良いから隠れようと思って…」

「…成程」

隠れられそうだと思って、手術室だと知らずに潜り込んだのか。

まぁ何にせよ、見つからなくて良かった。

「ほんとだ…これ、手術台だ…」

「…あぁ…」

みらくは怯えた顔で、その手術台をまじまじ見つめていた。

…手術台には、ところどころ、赤黒いシミがこびり付いていた。

そのシミのことは、敢えて口には出さなかった。

これ以上みらくを怯えさせたくはなかった。

「病院…。今度は病院なんだ…」

「そのようだな」

「…何と戦わされるの…?またゾンビ…?」

「…それは分からない」

病院にゾンビって出るのか?

…それを言うなら、普通学校にもゾンビは出ないはずだがな。

しかし…さっき、廊下で聞いた足音。

あの足音は、これまでのゾンビのものとは違っていた。

もっと確かな足取りで…まるで普通の人間の足音のようだった。

「多分…また違うバケモノだと思うが…」

「…そう…。今度は何なんだろうね…」

「…さぁ…」

…それは分からないが。

「何で私達なんだろう…。私が…悪いことをしたから…?その罰なの…?」

「…あまり、関係ないと思うが…」

その理屈だと、俺も罰を受けていることになるな。

しかし…俺達は悪夢を見る前に、誰かに謝られるという夢を共通して見ている。

これがもし罰なのだとしたら、「すまない」と謝るだろうか?

むしろ、「自業自得だ」とか言われそうなものだが…。