神に選ばれなかった者達 前編

考える暇もなく唐突に襲いかかってこないというだけで、前回のゾンビよりは精神的に楽だな。

…と、呑気に思っていたのはこの時までだということを、俺はまだ知らない。

「…響也くん…大丈夫…?」

ベッドの下から、みらくが顔を覗かせた。

動くなって。

「大丈夫だ。何もいなかった」

どうやら、最初の難は逃れたようだ。

「そっか…。良かった…」

…良かったのだろうか。果たして。

敵の姿が見えないのは怖いな。

…焦る必要はない、か。

夜はまだ長い…。…それに、今夜遭遇しなかったとしても、明日以降、嫌でも遭遇することになるだろう。

その時、姿を見ることになるはずだ。

今回の敵が…どんな敵なのかを。

「…終わらなかったね、夢」

「ん?」

ベッドの下に蹲ったみらくが、ポツリと言った。

「ゾンビ…やっと倒したから、今夜からは…嫌な夢とか何も見ずに…」

「…」

「前みたいに…平穏な夜が過ごせるかと思ったのに…」

…あぁ。

それは…なんと言うか、残念だったな。

「響也くんは、そう思わなかった…?」

「…思わなかったな」

ゾンビの第2軍が現れる心配はしていたが。

今夜からは解放されるかもしれない、という期待はしていなかった。

「『処刑場』のメンバーが言っていただろう。一つ倒しても、翌夜からはまた次のバケモノが現れる、と…」

「そうだけど…。でも…。出来れば終わって欲しいって…そう思うのは間違ってる…?」

「…間違ってはいないな」

期待するだけなら、誰でも自由だ。

「それなのに…またこんなところにいる。これは何なの…?ここは何処なのよ…。どうして私がこんな目に遭うの…?」

「…」

疑問が尽きないようだな。

出来れば、納得の行く理由を説明してあげたかったのだが。

俺には無理だな。

「これが何なの、とどうして私がこんな目に、という質問には答えられないが…。ここが何処なのかは答えられるぞ」

「え?」

「ここは病院だ」

この部屋に入った時、俺はその確信を持った。