神に選ばれなかった者達 前編

「…みらく、もしバケモノが入ってきたら…」

「な、何…?」

「俺が引き付けてる間に、手榴弾を投げてくれ」

「…えっ…」

古典的ではあるが、それが一番有効な方法だろう。

「で、でも…それじゃ、響也くんが…」

「何もしなかったら、二人共殺されるぞ」

相手はまだ分からないが、前回のゾンビ同様、多分初見では勝てない。

だったら、せめて一度でも死ぬ回数が少ない方が良い。

二人のうち…どちらかだけでも。

「それは…そうかもしれないけど…。でも、それなら響也くんが…」

「それとも、みらくは死にたいのか?」

「そ、そんな訳…!」

「だったら、やるべきことは一つだ。覚悟を決めてくれ」

「…」

みらくは真っ青な顔をして、ウエストポーチを抱き締めた。

…さぁ、どうなるかな。

このままこの部屋でやり過ごすことが出来れば、俺が爆死することはなくなるんだが…。

…。

…そのまま、5分ほど二人で息を潜めていた。

…入ってこないな。誰も。

「…大丈夫そうだな」

「…そう見せかけて…ってことはない?」

その可能性も勿論あるが。

あの廊下がいかに長かったとしても、5分もあれば余裕で一往復出来るだろう。

それでも誰も入ってこないということは、あの足音の目的は、この部屋ではなかったのだろう。

…拍子抜けした感が否めないが。

何も入ってこないというのは、それだけで有り難いからな。

だが、安心の為には一度確認すべきだろう。

「…少し待っていてくれ」

「えっ…?」

俺は、一人でベッドの下から這い出た。

「ちょ、待ってよ。危ないわ…!」

「危ないから、そこで待っててくれと言ったんだが?」

「そうじゃなくて、君が…!」

あぁ、俺か。

確かに危ないのは事実だが、でもどちらかが危険を冒さなければ、安心を得られないからな。

「確認したら、すぐに戻る。そこを動かないでくれ」

「響也くん…!」

俺はみらくをベッドの下に置き去りにして、扉ににじり寄った。

それから、そっとその扉を僅かに開く。

そこから首だけを出して、周囲に誰も近寄ってきていないかを確認した。

…もし、扉のすぐ向こうにバケモノがいたら、俺はあっと言う間に餌食だったろうが。

幸いなことに、そこには誰も…何もいなかった。

…どうやら、瞬殺は免れたようだな。