神に選ばれなかった者達 前編

トレーに、それらの料理を盛り付けると。

黒衣人間はトレーをカートに乗せて、またゴロゴロと押して運んでいった。

…一体誰が、あのゲテモノを食べさせられるんだか。

正直、これ以上はもう見ていられなかった。

アレを食べている人?モノ?が何なのかは気になるけど。

実際にあんなものを口にしているところを見たら、多分またゲロ吐きそう。

ふぁには、そっと姿を隠して、身を潜めていた。

…しばらく、そのまま待機していると。

調理が終わったらしく、黒衣人間達が次々に、厨房を去っていった。

…やれやれ。早くどっか行ってくれ。

見つかったらと思うと、はらはらして落ち着かない。

コック帽みたいな帽子を被った料理長だけは、しばらくの間一人で残って、厨房をうろうろしていた。

おい。早くどっか行けよ責任者。

10分くらい、料理長は厨房に残って、色々見回っていたが。

無事に見回りが終わったのか、料理長も厨房から出ていった。

…はー、やれやれ。

念の為、ふぁには厨房の中を念入りに盗み見た。

…よし、誰もいない。大丈夫そうだ。

それじゃ、ちょっと失礼…。

ふぁには、無人になった厨房にお邪魔させてもらった。

調理器具は、あらかた片付けられていた。

ボウルとか鍋とかまな板とか、現実でも存在しているキッチン用品もあれば。

ゴッツい靴底みたいな大きさの、巨大な肉叩きや。

通常の10倍以上はあるんじゃないかってくらい、大きなすりこぎとすり鉢もある。

…一体何をすり潰す為の道具なんだか。怖っ…。

それ以外にも、使い方も分からない鋭利そうなキッチン用品も置いてある。

包丁の種類なんて多種多様で、死神の鎌か?ってくらい大きなものから。

一番小さくても、一般的な出刃包丁くらい。

でけーよ。

普通の包丁の刃と違って、ノコギリみたいなギザギザがついているのも、また恐ろしい。

ふぁにも、さっきこれで斬られたんだよな。

…おまけに、死んだ後、頭蓋骨をスープにされたんだよな?

畜生…。肉から骨まで全部美味しく頂きやがって…。

ふぁにの肉なんて、絶対不味いからな。間違いない。

調理はもう終わっているはずなのに、未だにこの厨房の中には、血生臭い匂いが漂っていた。

…うぇ。

ともかく、これではっきりした。

あの黒衣人間共が、今回この世界で倒すべきバケモノなんだってことが。

人間を当たり前のように食材にするなんて、奴らがバケモノだという何よりの証拠である。

今度の敵は、食人種か。

また奇妙なモノと戦わされる羽目になったもんだ。