神に選ばれなかった者達 前編

黒衣料理長は、じっとふぁにのことを見つめた。

そして。

「…カノタレラミ?」

…と、呟いた。

…はい?

喋んの?あんた…。喋るバケモノとは、こりゃまた珍しい。

昨日まで戦ってたゾンビは、「ギシャァァァ」とか「ガァァァ」としか言わなかったから、何だか新鮮。

知能が高そうな感じするよな。

ただ、なんて言ったのか全然分からない。人語で頼むよ。

「スデウヨノソ」

「イナケオハテシカイ、バラナ」

「タシマリマコシカ」

なんて言ってるのか分からんが、楽しそうな会話じゃないことは、声質で分かる。

そして、何より。

「イナラナバレケナサロコ、バラナタレラミ。…ウナモオクルワ」

そう言って。

黒衣人間の一人が、鋭利な出刃包丁を手にふぁにの前に迫った。

…あぁ、そういうことね。

ふぁには、思わず笑ってしまった。

それでふぁにも、鶏肉か豚肉みたいに骨ごとぶつ切りにされて。

で、さっきのミキサーに入れられて、人間ミックスジュースの原材料になる訳ね。

はいはい…分かりました。

良いよ。…捕まった時点で、殺されることは覚悟していた。

バケモノとの戦いで、楽に死ねるとは思ってない。

黒衣人間は、ふぁにの服を無理矢理破いた。

肉をパックから取り出すようなものだ。

あっという間に、生まれたままの姿になったふぁには。

そのまま、厨房に置かれたまな板に横たわらされ。

逃げられないよう、ガッチリと押さえつけられた。

まな板の上の鯉、って奴だな。

人間に捌かれる魚も、こんな気持ちなのかもしれない。

どうせなら、もっと美味しく…ステーキとか唐揚げとかに調理してくれれば良かったのになぁ。

生肉のまま、ペーストにされて人間ミックスジュースなんて…。そりゃあねぇよ。

あぁ…でも、無理か。

ふぁにの肉なんて、絶対美味しくないに決まってるもんな…。

ジュースでも何でも、せめて残さず食べてくれるなら、ふぁにとしても本望だよ。

殺され、食べられる決意をしたその直後。

ふぁにの首を胴体から切り離す為に、鋭利な出刃包丁が振り下ろされた。