神に選ばれなかった者達 前編

その日俺は、眞沙に頼まれるがまま、眞沙の試験勉強を見てやった。

これは試験が近くになるといつもやっていることだから、特に語るべきことはないが。

問題は、例の謎アプリである。

この問題を解決しないことには、安心して眠れないような気がする。

その後、午後から、眞沙に言われた通り携帯ショップに行ってみた。

「実は数日前から変なアプリが勝手にインストールされてて…」と訴え。

ご覧の通り、と『処刑場』のアプリを指差したが。

熟練の携帯ショップ店員でも、このようなアプリは見たことも聞いたこともないとか。

怪訝そうな顔で、俺のスマホの画面を見つめていた。

それから、「何か変な操作されました?」とか、「誰かにスマホを触られた可能性は?」とか、色々聞かれた。

そう聞かれても…。俺としてはまったく、身に覚えが…。

変な操作、というのが俺には分からないが。

思い当たる節はないので、素直にそう言った。

普段と変わらない使い方しかしてない。

それから、もう一つの可能性…。誰かが俺のスマホを勝手に使った、という可能性だが。

これも多分…ないとは思うが、確かなことは言えない。

まったく覚えがありません、とも言えない。

俺は身に覚えがないが、俺のクラスメイトにはあるかもしれない。

自慢ではないが俺は、クラスメイト…主に雨野リリカに嫌がらせを受けている身だからな。

いつものタチの悪い嫌がらせの一環で、タチの悪いアプリを勝手にインストールされた…可能性が、なくもない。

隙はあると思うんだ。俺は、常に制服のポケットにスマホを持ち歩いてる訳じゃないからな。

学生鞄の中に、無造作に突っ込んでるだけだからな。

俺が自分の机を探して、ゴミステーションに行ってる間とか。

俺が、外の花壇にトカゲを埋葬しに行っている間とか。

…いや待て。でも、スマホのロック画面をどうやってパスしたんだ?

指紋認証をクリアしないと、使えないはずだが…。

「…指紋認証って、他人でもそんなに簡単にクリア出来るものなんですか?」

「いえ、そんなことはないですが…。寝ている間にご家族がこっそり…とか」

「…家族が…」

…その可能性は、多分ないな。

今一緒に住んでる家族が、俺の寝てる間に勝手に俺の指を使って、俺にバレる危険を犯してまで。

そこまでして、俺のスマホに侵入する必要があるはずがない。

と言うか、そうまでして見たいのなら、起きてる時に普通に頼んでくれ。

「ちょっとお前のスマホ見せろ」って、直接頼んでくれて構わない。

雨野リリカやクラスメイト達相手は、さすがに嫌だが。

家族相手だったら、特に隠すことなく見せられる。

見られて困るようなことはなにもない。…一応。多分。

だから、家族が勝手に触った…というのは考えにくい。

「家族…多分家族ではないと思います」

「そうですか…。他にも、日常的に触っているものから指紋を採取する、という方法もありますが…」

「…成程…」

じゃ、有り得るとしたら、クラスメイト達…雨野リリカ達の仕業、だな。