神に選ばれなかった者達 前編

給食カートをゴロゴロと押しながら、黒衣人間は廊下の突き当たりの部屋に入っていった。

…何だ?あの部屋。

あれが給食室なんだろうか。

ふぁには、抜き足差し足忍び足で、その部屋に向かってにじり寄った。

「…」

…何だろう。

何だか、異様に気持ち悪い匂いがする。

生臭い匂いと言うか…。生ゴミの匂いと言うか…。

とにかく気持ち悪い。鼻つまみたくなる。

ハンカチとか持っとけば良かったな…。

姿勢を低くして、その異臭漂う部屋に近づき。

ふぁには、そうっと部屋の中を盗み見た。

…そこには、異様な光景が広がっていた。

そこはどうやら、本当に給食室…と、言うか厨房だった。

料理を作ってる場所。ひろーいキッチン。

厨房の中には、大勢の黒衣人間が、忙しそうに働いていた。

全員、例の黒い服を着ている。

目だけを出して…。

中には、その両目にもゴツい水中眼鏡みたいな覆いをして、隠しているものもいるくらいだ。

お前、それ、見えにくくね…?

料理と言うより、まるで理科室で実験でもしているかのような出で立ち。

しかしそこで行われているのは、間違いなく料理だった。

大勢の黒衣人間が、まな板の上で出刃包丁を使って、材料を切り分け。

また大勢の黒衣人間が、切り分けた材料を大鍋に入れてかき回し。

また大勢の黒衣人間が、出来上がった料理をトレーに盛り付けていた。

…本当に、学校の給食室だな。

黒衣人間達の、あの気色悪い衣装を別にすれば、の話だが。

ふぁには更に、目を凝らして厨房の中を盗み見た。

無駄に目が良いせいで、ふぁにには見えてしまった。

黒衣人間達が、一体「何」を調理しているのかを。

厨房のど真ん中に、大きなミキサーのような機械が置いてあった。

恐らく、あれで食材を細かく切ったり、混ぜ合わせりする為に使うのだろう。

まな板の上で材料をぶつ切りにして、ある程度の小ささになったら、それをミキサーに投げ込んでいるのが見えた。

その時だった。

「…?」

ミキサーに投げ込まれた食材の中に、人の腕のようなものが見えた。

目を凝らしてよくよく見ると、それは、本当に。

「…!」

五本の指がついた、人間の腕だった。

人間の腕、肘から先の部分が、巨大なミキサーに投げ込まれているのだ。

…冗談だろ、おい。