神に選ばれなかった者達 前編

お陰で、制服も体操着も学生鞄も教科書も、ぜーんぶお下がり。

近所にその高校を卒業した子がいたらしくて、その家から、入学に必要な道具一式を譲り受けたのだ。

サイズなんて到底合う訳もなく、制服はよれよれのダボダボ。

三年間みっちり使われた学生鞄は、ヘタって伸び切って、おまけにチャックが壊れていた。

教科書も擦り切れてるし、体操着なんて土汚れが付着して、汗で黄ばんでいた。

それらを身につけると、いかにも野暮ったく、そしてみっともなかった。

今でも忘れられない。高校の入学式のことを。

最高に野暮ったい格好をして、入学式に臨もうとするふぁにのことを。

家族は、大爆笑しながら見ていた。

「何?そのみっともない格好。」

「在校生と間違われるんじゃねw?」

「まぁ、でもあんたにはお似合いよねw」

…みたいな。

うるせーし。余計なお世話だし。

しかもその後、いよいよ入学式に臨むと、余計にふぁには悪目立ちした。

いくら底辺校と言えども、新入生なら、真新しい制服と学生鞄くらいはちゃんと揃える。

他の新入生は、ぴっかぴかの一年生で、きちんと採寸した新しい制服を着ているのに。

ふぁにだけは、いかにもお古です!って感じの、ダボダボ制服を身に着けてるもんだから。

そりゃあもう、目立つの何のって。

新しいクラスメイトからも、入学式に参加していた父兄からもひそひそ指差されるしさぁ。

ほんと、嫌な気分だったよ。

まぁ、だからって傷つきはしなかったけどな。

ハナから分かってたことなのだから、いちいち落ち込んだりしない。

良いよ別に。みっともない格好でも。

ちゃんと制服着てんだから。上等。

それにほら、ちんちくりんの制服よりは、ダボダボの制服の方がマシだろ?

どうせ三年間着るだけなんだし、何でも良いや。

周囲はふぁにをくすくす笑っていたし、馬鹿にもされた。

露骨に、「お前んち貧乏なんだなw」って言われたこともある。

それでも、ふぁににとっては今のところ、これまでの学校生活で一番快適だった。

高校に入る前、父親に言われた。

「高校を辞めることは絶対に許さないから、何が何でも学校に行け。ちゃんと卒業しろ」と。

普通、そんなこと言う親いる?

そりゃ子供に不登校になって欲しくないのは、全国の父兄の皆様の願いだと思うけども。

そこはさぁ、嘘でも、「無理しなくて良いからな」とか。

「慣れるまで、ちょっとくらい休んでも良いから」とか。

そういう優しい気遣いがないもんかねぇ。

ま、ないわな。

むしろ突然そんなこと言われたら、別人にすり替わったんじゃないかと心配になるからやめてくれ。

小学校でも中学校でも、ふぁにが学校で上手く行ってなかったことを知っているのだろう。

相談したことはないし、その件で助けてもらったこともないけど。

あるいは、ふぁにみたいな陰キャは、不良高校に入ったら孤立していじめられるだろう、と予想したんだろうか。

それはあながち間違いではない。

高校に入ってからというもの、ふぁには一人も友達なんて出来てない。

気軽に話が出来るクラスメイト、なんてのも一人もいない。

現実では、ふぁにはずーっと一人ぼっちなのだ。