神に選ばれなかった者達 前編

ほたるはこれまで、ずっと耐えてきた。

現実で、どれほど辛い目に遭っても。頑張って耐えてきた。

一生懸命耐えてきたのは、いつか解放されると信じていたからだ。

いつか報われる日が来る。いつか…許してもらえる日が来るって。

そう信じていたから。いつか終りが来るって信じていたから、何とか頑張ることが出来たのだ。

…だけど、この悪夢に終わりはなかった。

終わりがない。それは永遠の苦しみ。

この苦しみが、永遠に続く。

何度も繰り返される死に、ほたるは漠然とではあるが、知ってしまった。

…いや、本当は知っていたのだ。

薄々分かっていた。…気づいていたけど、認めたくなかった。

いつかは許してくれる。そう信じていながらも。

いつまで経っても、許してもらえるどころか…家族は、ほたるから離れていくばかりだった。

父親は相変わらず、毎晩のようにほたるを押し入れに閉じ込めた。

ほたるに向かって口汚く罵り、大声を上げ、そして気分次第でぶん殴ってきた。

母親は、ほたるのことを無視した。

ほたるがいじめられていることを知りながら、何もしてくれようとしなかった。

兄弟達は、そんなほたるを嘲って笑った。

まるでほたるをいじめるクラスメイトと同じように、ほたるを嘲笑い、馬鹿にした。

それは、家族ではなかった。

こんなものは家族ではない。

許してなどくれない。いつか許されるなんて、そんなものはただの幻想だった。

いつか、いつか…なんて望みは、壊れそうな心を何とか守る為に、無意味な自己防衛をしていたに過ぎない。

永遠に、「いつか」なんてやって来ない。

自分に待っているのは、終わらない苦しみだけ。

…そのことに気づいた時、ほたるの心を繋いでいた最後の糸が、ぷつりと切れた。



…思えばこの時、ほたるはもう死んでしまっていたのだ。

夢の中の話じゃない。…現実の話だ。