神に選ばれなかった者達 前編

ほたるを襲ったのは、海の底に出てくるバケモノ。

海の中でバケモノって言ったら、何を想像する?

巨大なタコとか?イカとか?

それとも、海坊主みたいなイメージ?

残念。どれも違う。

ほたるを襲ったのは、さながら深海都市を統べる主。

身体が半分魚で、もう半分は人間。

…って言うと、「えっ。何それマーメイド?ロマンティック!」って思う馬鹿がいるかもしれない。

本当に馬鹿だな。

海に現れる魚人が、可愛いマーメイドだと思ったら大きな間違いである。

上半身は人間のもので、ちゃんと腕が二本生えている。

胸元の筋肉も発達していて、無駄にムッキムキの体躯。

それなのに下半身は魚のもので、それも超絶醜い魚。

ところどころ鱗が剥げ、エラの形もいびつ。

上半身がムキムキなのに、下半身らやたらと貧弱なのが、余計に不格好に見えた。

顔は…どちらかと言うと人間寄りで、目も耳も鼻も口も、ちゃんとついている。

何なら、頭髪の名残だったらしい髪の毛っぽいものが、頭頂部にひょろひょろと生えていた。

だけど、顔のパーツでまともに見えるものは一つもなかった。

目は魚の目のように、大きくてギョロギョロしていたし。

鼻は、ただ顔の中心に、黒い小さな穴が空いているだけ。

耳はさながら、魚のエラのようで…とても耳のようには見えない。

一番気持ち悪いのは口で、顔に切り込みを入れたように、口だけが異様に大きかった。

顔の半分以上の面積を、口が占めていると言っても過言ではない。

その口には、鋭いギザギザの歯が光っていた。

まるでサメ…いや、サメ以上だ。

とても魚の顔、魚の口には見えない。

それでいて、人間でもなかった。

顔中の皮膚に鱗がついていて、あちこちに大小の歪なエラが生えている。

その気持ち悪さは、この間までふぁに達が戦っていたゾンビをも凌ぐ。

ゾンビなんて、あんなのふぁにに言わせれば可愛い子供みたいなもんだよ。

この、気持ち悪い魚人に比べれば。

こいつが一体何なのか、正体は未だに定かではないが。

便宜上、こいつのことは半魚人と呼ぶことにしよう。

深海都市に現れ、毎夜に渡ってほたるを殺したのは、この半魚人だった。

ほたるが生贄となって、最初に戦ったのも、この半魚人。

何なら、ふぁにが最初に夢の中で戦ったのも、この半魚人。







…そして、ほたるの心を折り、生きる希望を失わせたのもまた、この半魚人だったのだ。

半魚人の罪は重い。