神に選ばれなかった者達 前編

しかし、ほたるに何が出来ただろう。

臭いと言われたって、バイ菌扱いされたって、どうすることも出来ない。

衣類を綺麗に洗濯したくても、洗剤も無しの手洗いだけじゃあ、限界がある。

ほたるだって、自分の匂いのことは薄々気づいていた。

衣類を洗濯している時に、使い古しの嫌な匂いがしたから。

…え?どんな匂いか分からないって?

今すぐお風呂場に行って、長年使ってクタクタになったタオルを手に取って、匂いを嗅いでみると良い。

そんな匂いだよ。

いくら丁寧に洗濯していたとしても、何度も使ってると嫌な匂いがしてくるものだ。

ましてや、ほたるは自分の洗濯物を、屋根のないところに干してたから。

不意の夕立ちや通り雨が降ると、洗濯物がびしょびしょになっちゃってた。

雨に濡れると、洗濯物って奇妙な匂いがするよな。

家族と同じ物干し場に干してたら、邪魔だっつって捨てられちゃったらしい。

それで仕方なく、別の場所に干してたら…雨ざらしになっちゃって。

余計、変な匂いがするようになったって訳。

うーん…。こればかりは、クサイと言われても、言い返せない。

で、この時の、給食の件で。

ほたる=臭い、みたいな認識が定着して。

ほたるが傍を通ると「クサイ」、「汚い」と言われ。

ほたるが触ったものは、誰も触らなかった。

それどころか、ほたるが触ったものには「ほたる菌」なるバイ菌がついているとして、クラス中に嫌悪された。

今でも忘れられないエピソードの一つに、席替え事件がある。

席替えって、小学生の時は結構お待ちかねのイベントだよな。

同じ教室でも、座る席が変わると景色が変わって見えてさ。

後ろの方とか、窓際の席は人気だった印象。

そしてクラスメイトにとって一番の「ハズレ席」が、ほたるの隣の席だった。

ほたるのクラスは、男女が隣同士に座るようになってたんだけど。

女の子達は、どうかほたるの隣じゃありませんように、と祈っていた。

で、厳正なるくじ引きの結果、ほたるの隣の席になってしまった「不運な」女の子は。

余程ほたるのことが嫌だったのか、「ほたる菌がつく」と言って、泣き出す始末。

泣くほど嫌か。ほたるの隣が。

女の子が泣き出したことで、何故か、ほたるがその子を泣かせたとして、クラスメイトに責められた。

いや、ほたるは何も悪いことはしてないんだけどね。

悪いのは、その女の子のくじ運であって。

それなのに、何故か、ほたるはクラスメイト皆の前で、その子に「ごめんなさい」と謝らされた。

自分でも、何で謝ってるのか分からなかったに違いない。

結局ほたるは、皆から爪弾きにされ。

一番後ろの席で、隣に誰もいない場所で、ぽつんと座らされた。

そういうことが何度も続いて、段々と、ほたるの心は麻痺していった。