神に選ばれなかった者達 前編

「良いだろ?別に。お前、金持ちなんだから」

「…!…っ…」

渾身の嫌味である。

それは少し前までの話であって、今のほたるは一文無し。

どころか、必要最低限の食べ物さえ、手に入れることが出来ない有り様だった。

「で、でも…」
 
それでも必死に、何とか抗弁しようとするほたるだったが。

「おい、早くしろよ。何揉めてるんだよ」

ほたるの後ろに並んでいたクラスメイトが、口を尖らせた。

それを見て、びくっ、とするほたる。

「給食係が入れてくれたのに、何の文句があるんだよ?」

「生意気なんだよ、お前」

「黙って出されたものだけ食べろよ」

クラスメイトが口々に、ほたるを糾弾。  

こうなると、ほたるはもう何も言えない。

どう考えても、間違っているのはいじめっ子達の方だ。

アレルギーや好き嫌いがない限り、給食は平等によそいましょうって、給食係のルールで決まってんだろうが。

でも、結局ほたるは何も言えなかった。

生来の陰キャが、ここで災いした。

仕方なく、ほたるは箸の先で、ちょびっとだけの食べ物をすくって食べた。

食事の時間、わずか一分未満。

…どころか、2秒くらいで終わった。

咀嚼の必要なかった。ぺろっと舐めるだけで終了。

こんなんじゃ、何も食べていないのと同じだった。

おかわりをしたくて、ほたるは食器を持って大鍋に向かったが。

その時もう、既に鍋は空っぽで、ご飯も一粒も残っていなかった。

いつもなら、少しくらいおかずやご飯が余っているはずだったのに。

これも、いじめっ子給食係の仕業だった。

今日はわざと、ほたるに食べさせない為に、皆に少しずつ多めに配膳したのだ。

これは酷い。

お陰でほたるはその日、給食をほぼまったく食べられなかった。

どれほどお腹が空いてきたか、こればかりは、当事者であるほたるしか分からなかったことだろう。

しかも、クラスメイト達は、そんな惨めなほたるを見て、にやにやしていたんだから。

本当に悪趣味。

…で、この時のほたるに対する嫌がらせが、余程気に入ったものと見える。

何せ、これから以降、似たような嫌がらせを繰り返されるようになったからだ。

食べられないのは、本当にキツい。

この種のいじめは大変残酷だったが、実はこれ、反対パターンもあるのだ。

反対パターンってどういうことだ、って思っただろう?

ほたるに食べさせないのではなく、逆に、無理矢理めちゃくちゃ食べさせる、というやり方である。