神に選ばれなかった者達 前編

…結局、その後。

「行っておいで」

「行かない」

の応酬を、焼きそばを食べながら延々と行い。

最終的に、

「のぞみが行かないなら、お兄ちゃんも来週仕事行かない」などと、意味不明なことを言い始め。

それはそれで困るのではないかと、結局承諾せざるを得なかった。

…ズルいよ、お兄ちゃん。

そんな駄々っ子する歳じゃないでしょ。

「はぁ…。…もう、お兄ちゃんは私に甘いんだから…」

「当然だよ。可愛い妹なんだから」

「…はいはい…」

昔っからそうだよね、お兄ちゃんは。

現実でも…そして、夢の中でも。

…ん?夢?

「…あ!そうだ、本…!」

「え、本?」

そう、本だよ。

お誕生日パーティ云々で、すっかり忘れてた。

私は慌てて、学生鞄の中から借りてきた本を取り出した。

例の、『猿でも分かる!手榴弾の使い方』っていう本。

夜までに、これを読み込んでおこうと思ったのに…。

もうそんな時間がないよ。

「それ、なんて書いてあるの?」

と、お兄ちゃん。

「手榴弾…。みらくさんが持ってた武器、あるでしょ?」

「あぁ、爆弾だって言ってたよね」

「そう、その爆弾に関する知識、少しでも蓄えておこうと思って…」

「成程。さすが、のぞみは真面目な良い子だなぁ」

…読む前に、夜になっちゃったら意味ないけどね。

「今夜の作戦…上手く行くと良いんだけど」

「大丈夫。何があっても、のぞみのことはお兄ちゃんが守るから」

…ありがとうね。

でも私だって、お兄ちゃんに助けられるばかりじゃなくって。

逆にお兄ちゃんを助けてあげたいって、いつもそう思ってるんだよ。