神に選ばれなかった者達 前編

「…」

私は、その場でしばらくじっとしていた。

けれど、いつまでもそうしていても仕方なかった。

お菓子を返す為に、お友達の家に戻ろうとしたけど。

結局返さず、そのまま持って帰ることにした。

お友達のお母さんが、私の分だけお菓子を多くくれたのは。

貧乏な私に対する、お慈悲のつもりなんだろうと思った。

私にプライドがあれば、「こんなのもらってやるもんか」と言って突き返すのだろうけど。

プライドなんかどうでも良い。

もらった食べ物をみすみす手放すなんて、そんな「贅沢」なプライドは、持ち合わせていなかった。

プライドでお腹は膨れないのだ。

それに、家にはお兄ちゃんがいる。

お兄ちゃんは私以上に、普段、滅多に甘いものを口にする機会なんてないのだ。

だから、私の為じゃなくて、お兄ちゃんの為に持って帰った。





「お兄ちゃん…ただいま」

「あれっ。お帰り、のぞみ。早かったね」

スラム街の安アパートに帰ると、お兄ちゃんが出迎えてくれた。

「どう?楽しかった?誕生日会」

「…ううん」

「えっ」

私は、ふるふると首を横に振った。

「お兄ちゃん、これ…お菓子。お土産にもらったの」

と言って、私は可愛いビニール袋いっぱいのお菓子をお兄ちゃんに渡した。

「お兄ちゃんにあげる」

「え?いや…。それは良いけど…」

困惑するお兄ちゃん。

「私の用意したプレゼント、全然喜んでくれなかったの」

「…えっ…」

「幼稚園児でも喜ばないゴミなんだって。ただの雑草なんだって…。私のせいで、お誕生日会が台無しになったんだって」

「…」

「皆、もっと…豪華な…お洒落なプレゼントを用意してて…」

「…」

「だから…私は、もう友達のお誕生日会には呼ばれないんだって…」

消え入りそうなくらい、小さな声で。

…震える声で。

「…そっか」

黙って聞いていたお兄ちゃんは、そう言って頷いた。

今朝まで、お誕生日パーティを楽しみにして、二人ではしゃいでいたのが嘘みたいだった。

…行かなきゃ良かった。…お友達のお誕生日パーティなんて。

彼女達は所詮、私とは違う世界の人々だったんだ。

同じ学校に行ってるからって、彼女達と同じところに立ったような気がしていた。

でも、それは大きな間違いだったのだ。