神に選ばれなかった者達 前編

…とはいえ。

昨夜は皆がいる手前、黙っていたけど。

それに…お兄ちゃんにも、こんなことは話せないけど。

私は正直、みらくさんが羨ましいと思った。

…何故か、って?

彼女は、武器を持っていたから。

初めて見る武器だった。響也さん曰く、あれは手榴弾なのだとか。

歴史の教科書で、写真を見たことがある気がする。

戦争中に使われた武器で…。要するに爆弾だ。

実際に昨日、響也さんが試しに手榴弾を投げるところを見た。

爆発の規模は小さくても、周辺に撒き散らされる破片は、凄まじい殺傷能力を持つのだとか…。

…凄いよね。羨ましい。

なんて強い武器なんだろう。それが3個も。

みらくさんの怯えや恐怖に同情している。それは確かだ。

でも一方で、そんな強い武器を持っていながら、怯えて戦えないみらくさんのことを。

心の何処かで、もどかしく思う気持ちもある。

私だったら、って。

私がそんな強い武器を与えられたら、もっと皆の為に戦えるのに…って。

お兄ちゃんのことも…守られるだけじゃなくて、守ってあげられたかもしれないのに…。

…この期に及んで、私はまだ無力だ。

皆の役に…お兄ちゃんの役に立ってない。

…。

…こんな考えじゃ駄目だよね。

みらくさんは仲間なんだから、嫉妬や羨望じゃなくて、お互いの強みを活かす作戦を考えなきゃ。

今夜、響也さんが提案した作戦を行うことになっている。

今度こそ皆の役に立てるように、頑張らなきゃ…。

…あ、そうだ。

ゾンビの倒し方、も良いけれど…。

みらくさんの持つ、手榴弾という武器。

私も調べて、勉強しておこう。

私の武器ではないけれど、もしかしたら、借りて使うことがあるかもしれない。

響也さんも知らない、別の使い方があるかも。

何にせよ、知識は持っておいて損はない。

私にはこれくらいのことしか出来ないのだから、出来ることは何でもやらなきゃ。

よし。手榴弾について書いてある本を探そう。

…あるのかなぁ?そんな本。

ジャンル…。どんなジャンルになるんだろう…。

考えながら、本棚を探しに行こう…と、思ったその時。

「空音さん。こんにちは」

「あ…。秋本君」

件の図書委員の秋本義実君と、ばったり遭遇した。

「今日も図書室に来てくれたんだね。嬉しいよ」

「あぁ、うん…ちょっとね」

「そうだ、空音さんが来たら、勧めようと思ってた本があるんだ。人気作家の新作で…」
 
「あ、ちょっ…。…ごめん」

「…?どうかした?」

…本当にごめんなさいね。

今日も…もう、借りたい本が決まってるんだよ。