神に選ばれなかった者達 前編

――――――…学校の校舎に現れるゾンビ達と戦い始めて、一体どれだけの日々が経っただろう。






「…はぁ…」

放課後。学校の図書室にて。

テーブル席に座って、私は目の前に本を広げていた。

例の、『猿でも分かる!ゾンビの倒し方』という本だ。

図書委員の秋本君に調べてもらったこの本を、私は毎日のように読み込んでいた。

何かヒントがないか。

毎夜現れるあのゾンビ達を、何とか倒す為の手がかりを得られないか…と。

非力な私に出来るのは、こうして知識を蓄えることだけだ。

そして、その知識はあまり役に立っていない…。

「…はぁ…」

…情けないよね。

悪夢を見るようになってから、一体何度自分をそう思ったことか。

人に守られるばかり…お兄ちゃんに守られるばかりで。

私は、足を引っ張ってばかり…。

結局、放火作戦も失敗してしまったし…。

しかも、そのせいで、新人の響也さんの心が折れてしまい。

彼は当分の間、私達のもとに姿を見せなかった。

現実でも、『処刑場』の掲示板に現れなかった。

彼が来なくなってしまったことで、随分と心配したものだ。

あんな作戦、やっぱり提案しなければ良かった。

私は何度も自分を責め、その度にお兄ちゃんに励まされたものだ。

お兄ちゃんだけじゃなくて、李優さんやふぁにさんにも。

ずっと心配だったけど…でも、彼は昨夜、戻ってきた。

響也さんが再び私達の前に現れたことで、どれほどホッとしたか。

響也さんはずっと、屋上に隠れていたらしい。

聞くところによると、屋上から、避難用の救助袋で校舎を降りてきたのだという。びっくり。

しかも彼は、一人ではなかった。

夜蛾みらくさんという、新しい生贄の女性と一緒にいた。

彼女は、昔の私以上に怯えきっていた。

それは、見ていて痛々しくなるほどだった。

気持ちが分かるだけに、私は他人事とは思えなかった。

…当然のことだ。

あんな悪夢を見れば、誰だって怯えるに決まってる。

私はお兄ちゃんが居てくれたけど、他の皆は、一人ぼっちだった。

みらくさんも、響也さんに会うまでは、一人で死の苦しみと戦っていた。

私達に出会ったことで、少しでもその苦しみを共有出来たら良いのだけど。