神に選ばれなかった者達 前編

…良かった。起きてくれて。

もう一生…目を覚まさないかと…。

「のぞみ…朝だよ」

「…おにい、ちゃん…?」

「うん…。そう、お兄ちゃんだよ」

「…」

のぞみは横になったまま、ぼんやりとこちらを見つめていた。

僕がその顔を見つめ返すと。

途端、のぞみの顔が恐怖に染まった。

「いやぁぁ!」

「のぞみ!」

「ごめんなさい、お兄ちゃん…ごめんなさいごめんなさい、私、私はっ…!」

のぞみは、明らかに錯乱していた。

まだ夢と現実の区別がついていないのだ。

「大丈夫、大丈夫だから。のぞみ!」

僕は、錯乱するのぞみを慌てて抱き締めた。

「大丈夫だよ…夢はもう覚めたんだ。朝になったんだよ。ここは現実なんだ」

「いやっ…いやぁ…!助けて、違う。ごめんなさい、私は、ちがっ…」

「大丈夫…。のぞみ、何もかも大丈夫だから…」

のぞみは震え、泣きじゃくり、酷く怯えていた。

可哀想に。怖かっただろうに…一人で。

「大丈夫…。大丈夫…」

何度もそう繰り返しながら、僕はのぞみの背中を優しく撫でた。

ごめんね、一人で逃げさせてしまって。

怖かったよね…。

「もう夢は終わったんだよ…。ここは現実なんだ。のぞみを傷つけるものは、何もないから…」

今夜のことは、まだ分からない。

でも今は、今だけは。

のぞみを傷つけるものは何もない。のぞみを傷つける全てから、僕が守る。

だから、何も心配することはない…。

「お…おにい、ちゃん…」

震えながら、のぞみは僕のことを呼んだ。

「うん。なぁに?」

「お兄ちゃん…お兄ちゃん、私…ごめんなさい…」

大粒の涙を、ポロポロと流して。

「泣かなくて良いんだよ」

「ごめんなさい…ごめんなさい…っ」

「…謝ることもないんだよ」

僕がそうしたくて、していることなんだから。

でも…良かった。ようやく、正気に戻ってくれたようだ。

「大丈夫、守るから…。のぞみが怖いもの、全部お兄ちゃんが守ってあげるから…。だから、何も怖がらなくて良いんだよ」

「…違うの。そうじゃないの…」

…え?

「私…いっつも、お兄ちゃんに守ってもらってばかりで…いつだって…。お兄ちゃんのこと、助けてあげられない…」

…あぁ、そんなこと気にしてたんだ。

「気にしなくて良いんだよ。のぞみを守ることが、お兄ちゃんの生きる意味なんだから」

のぞみを守れないなら、生きている意味がない。

のぞみは、僕の全てなのだから。

…しかし、のぞみは。

「違うの…。違うんだよ、お兄ちゃん…」

「…違わないよ」

僕はきっぱりとそう言い、のぞみの髪を撫でた。

だけど僕は、分かっていなかった。

この時、のぞみが何を言おうとしていたのか。

そして。