神に選ばれなかった者達 前編

「…っ!」

のぞみは、弾かれたように走り出した。

…そう。それで良いんだ。

僕は、安心してのぞみの背中を見送った。

急いで逃げるんだよ。…捕まらないように。

のぞみが走り出す音を聞きつけて、人間の顔をした犬達が、一斉にこちらを向いた。

…さぁ、今度は僕の番だ。

「…のぞみのところには、行かせないよ」

格好良い台詞だけども、現実は残酷だね。

こんな格好良い決め台詞に似合うほど、強ければ良かったのだけど。

今の僕じゃ、竹槍で戦車に挑もうとしているようなものだ。

…それでも、のぞみが逃げ切るまでの時間稼ぎになれば、それで良い。

行く手を遮るように、鉄パイプを持って現れた僕を。

犬達は、忌々しそうに睨みつけた。

その瞬間、奴らのターゲットが、のぞみから僕に変わったのが分かった。

良かった。

あとは、時間稼ぎをするだけだ。

僕は、鉄パイプを構えた。

簡単には死ねない。少しでものぞみが逃げる隙を作る為に…。




…その代償がこの傷みだと言うのなら、何故耐えられないということがあるだろう。

自分の身体が食われるのをぼんやりと見ながら、僕は満足げに微笑んだ。