神に選ばれなかった者達 前編

のぞみを探すことは、それほど難しくなかった。

何せここは、僕がかつて住んでいた場所なのだ。

何処に何があるのか、のぞみ以上に知り尽くしている。

…隠れられそうな場所も、だ。

驚くほどに、ここは僕の記憶の中にある生まれ故郷と同じだった。

だから、隠れる場所もよく知っている。

僕も昔は、よく隠れたものだ。

母さんが怒りを爆発させて手を上げる度、僕はのぞみを抱いて外に飛び出し。

母さんの怒りが収まるまで、ずっと隠れていたものだ。

寒いから家に帰りたい、とせがむのぞみを宥めながら。

その辺に落ちている小枝や空き缶で、一緒に遊んであげた。

あれは、確か…。

僕は、路地を2つほど抜けた先にあるゴミ捨て場を目指した。

そこには、雨によって錆びて、金具が壊れ、塗装も剥げたボロボロのゴミ収集庫があった。

…丁度、人が一人入れそうなほどのゴミ収集庫。

見覚えのあるその蓋を、そっと押し開く。

すると。

「…ひっ…!?」

「…!のぞみ…!」

やっぱり、ここだった。

身を隠しているならここだと思っていた。

ゴミ収集庫の中で、のぞみは震えながら隠れていた。

その怯えきった顔。

一人で、どれほど辛い思いをしてきたのか。可哀想に。

でもようやく、お兄ちゃんもここに辿り着いたから。

だから、もう何も心配することは、

「のぞみ、無事で良かっ、」

「いやぁ!」

「えっ」

僕の顔を見たのぞみは、思いっきり僕を突き飛ばした。

その場に尻餅をつき、噛みつかれた腹部が焼けるような痛みを発した。

「ぐぅっ…。うぅ…」

こんな痛みが何だって言うんだ。

のぞみが…味わった痛みに比べたら、こんなもの…。

僕は出血する腹を押さえながら、よろよろと起き上がった。

そして、恐怖に怯え、震えるのぞみを抱き締めた。

「…大丈夫、のぞみ。もう大丈夫だから」

可哀想に。こんなに脅えて。

どれほど辛くて、痛くて、心細かったことか。

「お兄ちゃんが守ってあげるから…。もう大丈夫だから…。…安心して」

「…え…。お…おにい、ちゃん…?」

僕に抱き締められながら、のぞみは呆然と、呟くように聞き返した。

…良かった。正気に戻ってくれたようだ。

「うん、お兄ちゃんだよ」

「…」

のぞみは、しばし呆然と僕の顔を見つめ。

それから。

「…っ!」

堰を切ったように、大粒の涙を溢しながら僕に抱きついてきた。

「お兄ちゃん…お兄ちゃんっ…」

「よしよし…。もう大丈夫だから。大丈夫だからね…」

僕はのぞみを抱き締めて、落ち着くまで背中を撫でてあげた。