神に選ばれなかった者達 前編

「…はぁ…。はぁ…」

…4回目の死は、そう簡単にはやって来なかった。

戦ったからだ。

この悪夢の中では、バケモノと戦わなければならない。

その原則を、大抵の生贄達が悟るのは、何日も経って…何度も死を繰り返してからだ。

だけど僕は、たった3回で悟った。

…と言うか、この程度、今に始まったことじゃなかった。

僕の人生はずっとそうだ。

戦わなきゃいけない。自分の身は自分で守らなければ、スラム街では生きていけない。

夢の中は確かに過酷だけど、僕達にとっては、現実だって負けないくらい過酷なものだった。

それ故、僕はバケモノと戦うことに躊躇しなかった。

鉄パイプで、襲いかかる人面犬を片っ端からぶん殴ってやった。

今では、僕を餌にしていた三、四匹の人面犬全部が、脳みそをぶち撒けて地面に倒れていた。

あまりに何度も殴ったせいで、顔が完全に潰れているやつもいる。

残酷、かつグロテスクな光景だったが。

そんなもの、とうに見慣れている僕にとっては、なんてことなかった。

「…ざまぁみろ…」

人面犬の残骸に、血の混じった唾を吐き捨ててやった。

力ある者が勝って、力のない者は負ける。

それこそ、僕が生まれながらに慣れ親しんだ、スラム街の掟だった。

…でも、無傷ではいられなかった。

迫ってきた人面犬達を倒す間に、自分も負傷していた。

右の脇腹に噛みつかれ、そこからじくじくと血が滴っていた。

…それでも、僕は勝ったのだ。

勝てば良い。それが全てだ。

「…のぞみ…。今、行くからね…」

こうしている今も、のぞみが一人で苦しんでいるかと思うと。

今すぐにでも傍に行って、優しく抱き締めてあげたかった。

血まみれ、脳みそまみれ、粘液まみれの鉄パイプを、ずるずると引き摺りながら。

僕は、愛する妹を探す為に歩き始めた。