神に選ばれなかった者達 前編

これが、3回目の死。

そして、今度は4回目。

「…」

どうすれば良い?僕は…一体、どうしたら良いんだ?

もしかしてこれが、のぞみが言っていた悪夢…。

その時、僕はハッとした。

そうだ、のぞみ。

何故忘れていたんだ。僕はのぞみを守らなきゃいけない。

のぞみもこの悪夢を見ているのなら、僕があの子を守らなくては。

何度でも。

こうしてはいられなかった。人面犬なんかにかかずらっている暇はない。

夢の中に来てもなお、妹のことを真っ先に守ろうとするところ、僕は昔から変わっていない。

「のぞみ…何処に…」

今すぐにでも、望みを探しに行きたかった。

しかし、僕の背後には、先程から何度も僕を餌にしてきた人面犬達がいる。

まずはこいつらの追跡を振り切らないことには、のぞみを探しにも行けなかった。

逃げることは出来ない。僕がいくら全速力で走っても、すぐに追いつかれる。

こういう時、普通の子供ならどうするのだろう。

「誰かに助けて欲しい」と思うんだろうか。
 
でも僕は、普通の子供ではなかった。

スラム街で生まれ、スラム街の掟が身に染み付いた子供だった。

スラム出身の子供は、誰かに助けて欲しいなんて思わない。

何の利益もなしに、他人が自分を助けるとは思わない。

自分の身を守ることが出来るのは、自分だけ。

何でも、自分でやらなければならないのだ。

怖いことや痛いことからは、逃げるのが一番。

でも…逃げることが出来ないならば。

残る手段は、一つしかない。

その為に、僕の手には鉄パイプが握られていた。

「ギシャァァァッ!」

迫ってきた人面犬に、僕は思いっきり鉄パイプを振り下ろした。

ガツンッ!!という手応えと共に、鉄パイプが人面犬の顔面に陥没した。

「ガァァァァァァ!」

僕の唐突な反撃に、断末魔の悲鳴をあげる人面犬。

鉄パイプの先に、グチャッとした肉と血が付着していた。

顔を潰された人面犬は、よたよたとその場をふらつき。

ベチャッ、と地面に倒れた。

…死んだのだろうか?分からない。

僕が反撃に出たことで、他の人面犬達も引いてくれたら良かったのだが。

仲間がやられても関係なしとばかりに、別の人面犬数匹が、僕に迫ろうとしていた。

…やるって言うのか。じゃあ、来い。

「…こ…ろ、してやる…」

夢の中だろうと関係ない。

僕とのぞみを引き裂こうとする者は、何人たりとも容赦しない。