その後どうなったかは、最早言うまでもないことだろう。
驚いた社長は、曖昧に笑って返事をしただけだった。
もっと喜んでくれるものと思っていたから、いそらの母は困惑したが。
突然告げたから、彼もきっと驚いたのだろうと思った。
そして二度と、社長が彼女のもとに来ることはなかった。
自分が捨てられたことに気づいたのは、いそらが生まれた後。
社長が、別の娼婦と一緒に居るところを見つけた時だった。
彼女は半狂乱で、彼に迫った。「私を助けてくれると言ったじゃないか」と。
「この子はあなたの子なのに、どうやって育てろと言うんだ」と。
しかし、あんなに彼女に優しかった社長は、返事をする代わりに彼女のことをぶん殴った。
そして唾を吐き捨て、「近寄るな、売女」と言い捨てた。
それで終わりだった。それ以上言うことは何もなかった。
赤ん坊を連れて呆然とする彼女のことを、周囲の人々は笑った。
特に喜んだのは、スラム街の娼婦仲間だった。
自分には強力なパトロンがいるからと、天狗になっていた彼女のことを、ずっと疎ましく思っていた。
疎ましい…と言うよりは、妬ましく思っていただけなのだろうが。
そんな彼女が捨てられ、しかも赤ん坊なんて厄介者を抱えさせられた。
今になって騙されたことに気づいても、全てはもう遅かった。
いそらの母は、全ての恨みつらみを、生まれたばかりのいそらにぶつけた。
よく生きていたものだ。
いそらは毎日のように暴力を振られ、暴言を吐き捨てられながら生きてきた。
他にお金を稼ぐ手段もなく、母親は再び、娼婦業に戻った。
その間いそらは、一部屋しかない小さなアパートで、母親の帰りを待っていた。
まるで、親鳥が帰ってくるのを待つ雛鳥のように。
面倒を見てくれる人なんていなかった。
いそらは一日中部屋にじっとして、母親が帰ってくるのを待った。
丸一日、どころか二日、三日と帰ってこないこともよくあった。
その間いそらは、家の中にある食べ物をちびちびと、少しずつ食べて生き延びた。
それは、耐え難いほどに過酷な毎日だった。
いそらの母は、いそらが家で餓えていようと、まったく気にしなかったからだ。
自分が家に帰ってきた時、いそらが部屋の中で餓死していたとしても、何とも思わなかっただろう。
むしろ、養わなければならない口が減って良かった、と思うのではないだろうか。
家の中の食べ物を勝手に食べたら、帰ってきた母に殴られることは分かっていた。
でも、生きる為に食べない訳にはいかなかった。
殴られる痛みより、飢えの苦しみの方が遥かに辛かった。
家の中にある食べ物が尽きたら、今度は食べ物じゃないものまで食べた。
それはアパートの外に捨ててあるゴミだったり、雑草だったり。
溢れそうな下水の近くを這うネズミや、石の下に隠れているミミズだったりした。
味なんて気にしなかった。それが本当に食べ物かどうかなんて、どうでも良かった。
食べた後に、腹痛にのた打ち回ることもしばしばだった。
それでも、生きる為には食べなければならなかった。
自分の力で、食べ物を得なければならなかった。
いそらは生まれて数年もしないうちに、自分で狩りをするハンターになってしまったのである。
驚いた社長は、曖昧に笑って返事をしただけだった。
もっと喜んでくれるものと思っていたから、いそらの母は困惑したが。
突然告げたから、彼もきっと驚いたのだろうと思った。
そして二度と、社長が彼女のもとに来ることはなかった。
自分が捨てられたことに気づいたのは、いそらが生まれた後。
社長が、別の娼婦と一緒に居るところを見つけた時だった。
彼女は半狂乱で、彼に迫った。「私を助けてくれると言ったじゃないか」と。
「この子はあなたの子なのに、どうやって育てろと言うんだ」と。
しかし、あんなに彼女に優しかった社長は、返事をする代わりに彼女のことをぶん殴った。
そして唾を吐き捨て、「近寄るな、売女」と言い捨てた。
それで終わりだった。それ以上言うことは何もなかった。
赤ん坊を連れて呆然とする彼女のことを、周囲の人々は笑った。
特に喜んだのは、スラム街の娼婦仲間だった。
自分には強力なパトロンがいるからと、天狗になっていた彼女のことを、ずっと疎ましく思っていた。
疎ましい…と言うよりは、妬ましく思っていただけなのだろうが。
そんな彼女が捨てられ、しかも赤ん坊なんて厄介者を抱えさせられた。
今になって騙されたことに気づいても、全てはもう遅かった。
いそらの母は、全ての恨みつらみを、生まれたばかりのいそらにぶつけた。
よく生きていたものだ。
いそらは毎日のように暴力を振られ、暴言を吐き捨てられながら生きてきた。
他にお金を稼ぐ手段もなく、母親は再び、娼婦業に戻った。
その間いそらは、一部屋しかない小さなアパートで、母親の帰りを待っていた。
まるで、親鳥が帰ってくるのを待つ雛鳥のように。
面倒を見てくれる人なんていなかった。
いそらは一日中部屋にじっとして、母親が帰ってくるのを待った。
丸一日、どころか二日、三日と帰ってこないこともよくあった。
その間いそらは、家の中にある食べ物をちびちびと、少しずつ食べて生き延びた。
それは、耐え難いほどに過酷な毎日だった。
いそらの母は、いそらが家で餓えていようと、まったく気にしなかったからだ。
自分が家に帰ってきた時、いそらが部屋の中で餓死していたとしても、何とも思わなかっただろう。
むしろ、養わなければならない口が減って良かった、と思うのではないだろうか。
家の中の食べ物を勝手に食べたら、帰ってきた母に殴られることは分かっていた。
でも、生きる為に食べない訳にはいかなかった。
殴られる痛みより、飢えの苦しみの方が遥かに辛かった。
家の中にある食べ物が尽きたら、今度は食べ物じゃないものまで食べた。
それはアパートの外に捨ててあるゴミだったり、雑草だったり。
溢れそうな下水の近くを這うネズミや、石の下に隠れているミミズだったりした。
味なんて気にしなかった。それが本当に食べ物かどうかなんて、どうでも良かった。
食べた後に、腹痛にのた打ち回ることもしばしばだった。
それでも、生きる為には食べなければならなかった。
自分の力で、食べ物を得なければならなかった。
いそらは生まれて数年もしないうちに、自分で狩りをするハンターになってしまったのである。


