神に選ばれなかった者達 前編

よくよく石鹸で手を洗ってから、教室に向かうと。

雨野リリカ他、取り巻きのクラスメイト達が、何やら机の上に物を並べて、わちゃわちゃお喋りしているのが聞こえてきた。

「すごーい。これ、春の新作だよね?」

「うん。奮発して買っちゃったんだー」

…とのこと。

ちらり、とそちらを見ると。

ピンク色の小さなパレットみたいなものが、たくさん並べられている。

そういえば、以前もああやって喋ってるのを見たことがあるな。

それに、聞き覚えもある。

春の新作…?

「可愛いよねぇ。サクラピンクも良いけど、やっぱりピンクピーチの方が可愛いかな」

「私はローズピンクの方が好きだなー」

「でも、パールピンクも捨て難いよね」

「ピンク」というワードが、怒涛のように聞こえてくるが。

俺も聞いたことがあるような気がするぞ。

サクラだの桃だのバラだの。

どれも同じピンクじゃないか、差なんてあるのかと思っていたものだが…。

「それに、こっちのチーク。これも可愛いよね。」

チークだと?

「これは何色?」

「ブロッサムピンクだよ。それと、ピンクマリーゴールド」

「あ、それ気になってたんだよねー」

「あと二つあったよね?ピンクチューリップと、ピンクダリア」

「そうそう。あの2つも可愛いなぁって思ってたんだけど、さすがに全部は買えないから」

「だよね。4種類は迷うもんねー」

それも聞いたことがあるぞ。

成程…。雨野リリカ達も、みらくと同じように化粧品、もとい。

コスメグッズとやらに、興味があったんだな。

あんなに食い気味で…。

「…ちょっと、俺にも見せてくれ」

「は?」

俺は、雨野リリカの机の上。

に、並べられたコスメグッズとやらを、じっと眺めさせてもらった。

…ふむ、成程。

どれもピンクだな。

実際に目の前にしても、それぞれの差がよく分からない。

「ちょ、何こっち見てんのよ!?」

雨野リリカがびっくりして、俺に唾を飛ばした。

俺はそれを無視して。

「一見したところ、どれもピンクで差がないように見えるが…。確かに、よく見たら微妙に色が違うな」

ちょっと薄かったり、濃かったり。キラキラが入ってたり…これがラメというやつだろうか。

この微妙な色の差で、他の商品と差別化しているのだろうか。
 
…やっぱり、そんなに差があるようには見えないが。

「これがコスメグッズなのか…。成程、勉強になった」

「何言ってんのよ?あっちに行きなさいよ。しっ、しっ」

犬のように追い払われた。

だが、もう見終わったから良い。

みらくが言っていたのはこれだったのかと、納得。

自分の知らない世界を垣間見たような気がする。