神に選ばれなかった者達 前編

「昨日は済まなかったな…。夢の中だけど…。…ここに匿ってもらえて、助かったよ」

そう言いながら、俺はにんじんスティックをタッパーから取り出して、一本ずつ与えた。

ウサギ達はぴょんぴょん寄ってきて、ぽりぽりとにんじんを齧っていた。

なかなかに癒やされる光景だな。

今度、機会があったら飼育委員に立候補しようかな。

ほら、また隠れることがあるかもしれないじゃないか。

それにしても、夢の中で校舎の中には人っ子一人いないのに。

何故、夢の中のウサギ小屋には、ウサギ達がいたんだろうな?

人間じゃないからセーフ、ってことなんだろうか。分からないが。

まぁ、何でも良いか。理由なんて。

ぽりぽりとにんじんを齧るウサギ達を、ほっこりと眺めていると。

「うわっ…。アンタ、こんなところで何やってんの…?」

「…ん?」

聞き覚えのある声がしたかと思い、振り向くと。

登校してきたばかりの雨野リリカが、ドン引きの表情でこちらを見ていた。

あぁ。奇遇だな。

「ウサギににんじんをやってる」

「…は?何で?」

「お世話になったお礼だ」

助けてもらったからな。七人全員。

俺が代表して、ウサギ達にお礼をしている次第である。

命のお礼がにんじん数本では申し訳ないが、味わって食べてくれ。

「…意味分かんないんだけど。キモっ…」

別に分かってもらう必要はない。俺が分かっていれば。

俺と、仲間達が分かっていればな。

用意したにんじんを全部与え終えて、俺はウサギ小屋から立ち上がった。

「うわ、獣くさっ…」

露骨に顔をしかめる雨野リリカ。

そうか。でも命の恩人。

ならぬ、命の恩ウサギだからな。

一生責任を持って毎日にんじんとキャベツを与えても、バチは当たらない。

「何でちょっと満足そうな顔してんのよ、ますますキモいんだけど」

「それは悪かったな…」

ウサギににんじんを与えただけで、何故キモい呼ばわりされるのか甚だ不思議だが。

すると、そこに。

「リリカ、何やってるの?何でそいつと一緒に居るの?」

雨野リリカの取り巻き、もとい友達のクラスメイトが、怪訝そうな顔で現れた。

「別に。こいつがキモいことやってるから見てただけ。早く教室に行こ。臭いのがうつる」

「あ、うん…」

足早に去っていく二人。

…さて、それじゃ俺も手を洗ってから、教室に向かうとしようか。