神に選ばれなかった者達 前編

…そのまま、地面に伏せていたが。

…何処も痛くはない。

どうやら、巻き添えで大怪我、という事態は避けられたようだな。

「響也くん…!大丈夫!?」

みらくが血相を変えて、こちらに駆け寄ってきた。

まだ危ないから。そんなに迂闊に近寄るな。

「俺は大丈夫だが…。…手榴弾は?どうなった?」

「…あれ…」

みらくが、指差した先には。

手榴弾が炸裂した箇所の地面が抉れ、鋭利な破片が撒き散らされていた。

へぇ。

…意外と強烈だな。

「どうだ?見えたか、ふぁに」

「そうだな…。爆発範囲は、大体5メートル前後ってところか。夢の中なのに、いやに現実的だな」
 
「今に始まったことじゃないがな」

「強くて羨ましいね。萌音もあの武器、使ってみたい」

熟練の『処刑場』メンバー達は、手榴弾の威力をナマで目の当たりにしても、あまり動じていなかった。

…さすがだ。

「す、凄い…。これまでで一番強い武器なんじゃないかな…」

「確かに…。爆発まで少しタイムラグがあったが」

「5秒くらいだったね。その間に投げないと、こっちが危ない」

そうだな。

躊躇って投げるのが遅れたら、あるいは投げたとしても飛距離が足りなかったら。

あの破片が、自分達に牙を剥く。

強力な武器は、それだけ扱うのもリスキーだということか。

それに…。

「3発だけ…ってのが惜しいな。もっと、こう…100個くらいあったら良かったのに」

それだと校舎ごと爆破してしまうことにならないか?

「それに、今は屋外だから俺達もノーダメでいられるが、これが室内だったら大惨事だぞ」

使うことが出来るのは、あくまで開けた場所のみ。

使用者も、使用場所も限られる。

…みらくがこれまで一度も、この手榴弾を使わなかったのは…正解だったのかもしれないな。

「強力ではあるが…でも、これでゾンビを倒せるかどうかは…怪しいところだか」

「うーん。もっとどかーんって、焼け野原に出来るくらい強かったら良かったのにね」

それだと、こちらも危ないのでは?

「しかも、上手く投げないと当たらないぞ」

それは俺も気にしていた点だ。

「仮に上手く命中して、爆発に巻き込めたとしても…これで倒せる数は、精々一匹か二匹くらいだろうな…」

「3個しかないから、それも大きな制約だよね…」

次々と明らかになる、手榴弾の欠点。

「これだったら、いそらの鉄パイプとか、今萌音が持ってる包丁…。それに、響也の錐の方が、使い勝手が良いかもな」

李優の冷静な一言に、俺とみらく以外の一同が頷いたが。

「…」

みらくは、「役立たず」と言われたように感じたのか。

一人、しょんぼりと俯いていた。

…別に、みらくが悪い訳ではないから、落ち込む必要はないと思うぞ。