神に選ばれなかった者達 前編

「こんな強力な武器があるなら、ゾンビの2、30匹あっと言う間に倒せそうだけど」

20匹や30匹どころか。

2匹、3匹でも無理だと思うぞ。

「…そう簡単にはいかない。手榴弾の扱いなんて、訓練もせずに出来るようにはならないだろう」

「でも、そう言って使わなかったら、多分一生使わないよ」

それもそうなんだが。

「試しに使ってみたら?別に失うものはないでしょ」

「そ…そんな簡単に言わないでよ…」

「え、簡単じゃないの?」

…久留衣萌音は、手榴弾のことを、輪ゴム銃くらいに考えているのかもしれない。

あるいは、これも熟練の生贄の貫禄なのかもしれない。

…恐れていても何も始まらない、というのは紛れもない事実である。

「みらく、それ…一つもらっても良いか?」

「え…手榴弾のこと?」

「あぁ」

みらくが、恐ろしくて使えないなら。

俺が代わりに使ってみよう。

どんなに避けようとしても、これから先、この手榴弾を使わなければ突破出来ないような状況が訪れるだろう。

その時、俺達の武器として適切に扱う為に。

威力、効果範囲、扱い方など、知っておいた方が良いだろう。

「大丈夫なの…?響也くん…」

「試しに使ってみるだけだ。…心配ない、もし誤爆しても俺だけで被害が済むように、離れた場所に投げるから」

「私達だけじゃない。君も傷つかないでよ…」

それはどうだろうな。

出来る限り、俺も無傷でいたいのだが…。好き好んで怪我したい訳がない。

だが、この手榴弾の威力を確かめる為には。

少しくらい、自分も危険を犯さなければならないだろう。

「…萌音が代わろうか?」

恐れ知らずの久留衣萌音が、自らそう名乗り出たが。

「いや…俺がやる。離れててくれ」

「そう。分かった」

俺は、みらくのウエストポーチから、手榴弾を一つ抜き取った。

玩具みたいな軽さだが、これ、本当に爆発するのか?

本当に玩具だったら困るな。

使い方は、インターネットで得た知識だが、ある程度のことは知ってる。

…大丈夫だ。

万が一誤爆したとしても、ここは夢の中。

一回死ぬだけで戻ってこられる。

ただ、死ぬほど痛いだけの話だ。

自分にそう言い聞かせ、俺はピンを抜いた。

すぐにドカンしたら、俺も一緒に爆死するところだったが。

ピンを外しても、すぐには爆発しなかった。

ピンを抜いた手榴弾を、俺は出来るだけ、遠くにぶん投げた。

それから、すぐに手榴弾から走って逃げ、自ら地面に伏せた。

その瞬間、手榴弾を投げた方角から、ドカン!!と凄まじい音がした。