神に選ばれなかった者達 前編

…挨拶は、ここまでにして。

「…あの後のことを聞いても良いか?」

俺は、佐乱李優達に尋ねた。

「調理実習室に放火した後のこと…」

「あぁ…。聞いても良いが、あんまり面白いものじゃないぞ」

…そうだろうな。

ウサギ小屋に、皆で隠れているところを見るに、大体察していた。

「あの後は、しばらく皆バラバラに隠れてたんだ。どうやら俺達、ゾンビを刺激し過ぎたらしくてな」

「しばらくは、ゾンビ達もかなり気が立ってたんです」

「多分、火を見て興奮してたんだろうな。いつになく攻撃的だったよ」

李優と、空音兄妹が教えてくれた。

…無理もない。

ゾンビにとって、火は天敵のようなものだからな。

危うく燃やされかけたのだから、ゾンビ達の気が立つのも当然だ。

…そう思えば、屋上に隠れていたのは、そんなに悪い選択ではなかったのかもしれないな。

「しばらくバラバラに隠れて、様子を見て…。それから、また部室棟に集まったんだが…」

「集まってるうちに、ゾンビ達に気づかれちゃったみたいで」

「新しく隠れ場所を見つけた方が良いってことで、このウサギ小屋を見つけたわけ」

らしい。

成程…。別行動してる間に、そんなことが。

「それで何で、よりにもよってウサギ小屋なんかに…」

「だって、他に安全そうなところ見つからなかったから…」

まぁ、校舎の中はゾンビが闊歩してる上に、開けた場所もないから危ない。

万が一ゾンビに遭遇した際、外の方が逃げやすいしな。

「それに、獣臭いのと狭苦しいのと、ウサギに申し訳ないっていう欠点を除けば、意外と居心地良いぞ」

それは居心地が良いと言えるのか?

「で、こうして安全な場所を見つけたから、改めて、新しい作戦を考えようとしてたところ」

「そうか…」

「良いタイミングで戻ってきてくれて良かったよ。それに、新しい仲間も一緒にな」

「…期待してるところ悪いけど、私は…響也くんみたいには、戦えないよ…」

みらくは、自信なさげにそう言った。

心配するな。俺も大して戦えないから。

「君は何の武器持ってるの?」

と、久留衣萌音が尋ねる。

「えっと…。まだ使ったことはないんだけど…これ」

「…何?それ」

みらくは、手榴弾の入ったウエストポーチを見せた。

「あー、なんかどっかで見たことある形だな」

「僕は見覚えがないけど…。のぞみ、これ知ってる?」

「嘘、これ…もしかして手榴弾?」

妹尾ふぁに、空音いそら、空音のぞみの順で言った。

空音のぞみは知っていたか。

「うん…。私も、響也くんに言われて、初めて知ったの…。…試してみたこともないしね」

「へぇ。手榴弾ってこんな形なんだ。玩具みたいだね」

「ちょ、萌音危ないだろ」

興味津々の久留衣萌音が、手榴弾を指先でツンツンしていた。

恐れ知らずだな。まぁツンツンしたくらいじゃ爆発しないから、その点は安心して良い。