神に選ばれなかった者達 前編

翌日の夜。

俺はみらくを伴って、校舎の外に降りることにした。

それをみらくに伝えると、彼女は酷く驚いた。

「ど…どうやって?校舎の中はゾンビだらけなんでしょ…?」

「そうだろうな」

「私…無理。戦えない…」

そんなにぶるぶる震えながら言わなくて良い。

分かってる。

俺だって、ゾンビまみれの校舎の中を、二人で突破出来るとは思っていない。

しかし、この屋上に、非常に便利なものを見つけてな。

これを使えば、ゾンビと戦うことなく、校舎の外に逃げられるのではないかと思ったのだ。

「戦う必要はない。これを使うんだ」

「え…何?」

俺は、屋上に設置された、四角い小さなコンテナを指差した。

「救助袋、って知ってるか?」

「救助袋…?何それ?」

「二階以上の建物で、火事や地震などの災害時に、地上に避難する為に使う避難器具だ」

簡単に説明するなら、布袋で出来た滑り台みたいなものだな。

学校やデパートなど、大勢の人が集まる二階建て以上の建物には、避難器具の設置が定められている。

この救助袋も、そのうちの一つだ。

さすがに使ったことはないけどな。

一度使ってしまうと、元に戻すのが大変なので、避難訓練などでも使用しているのを見たことはない。

でも、いざとなれば使う機会もあるだろう。

使い方を知っておいて損はない。

「垂直式と斜降式があるんだが、ここにあるのは垂直式のようだな」

では、早速使っていこうか。

「え、えっ…。そんなの…本当に使えるの?」

「理論上は」

「り、理論上って…」

現実じゃないからな。ここは。

何が起きても不思議ではないが、何かあって地面に叩きつけられても、ゾンビに食い殺されるよりはマシだろう。

「でも…使い方、知ってる?」

「知らない」

「えぇぇ…」

如何せん、使ったことがないからな。

「でも、こういう非常時に使用する道具は、老若男女問わず誰でもすぐに使い方が分かるようになってるはずだ。AEDみたいなものだ」

「えっ…。…AEDって、何だっけ?」

「自動体外式除細動器のことだ」

「じどっ…じょ…さっ…!?」

早口言葉ではないぞ。

なんてふざけている間に、俺は重りのついた袋の先端を、地上に向けて放り投げた。

トンネル状の滑り台が、屋上から地上に垂れ下がっている。

更に、滑り台の入り口の骨組みを起こす。

「よし。これで設置完了だ」

意外と簡単だったな。…ちょっと力は必要だったが。

「こ、これで本当に…地上に降りられるの?」

「理論上は」

「…頼りないなぁ…」

如何せん、俺も使ったことが(ry。