神に選ばれなかった者達 前編

「響也くんは凄いね…。強くて…賢くて…何でも知ってて…」

「別に…強くも賢くもないと思うが」

「そんなことないよ。手榴弾のことだって、私全然知らなかったけど、響也くんは知ってたでしょ」

あれは…単に、以前読んだ教科書の受け売りだ。

それに、いくら知識があっても、それが実践の場で役に立つとは限らない。

机上の空論という言葉もあることだしな。

「…君は立派だよ…」

「そんなことはない…。今だって、俺は逃げてるだけなんだから」

「逃げてなんかないよ。だって、戦ったんでしょ」

「…何と?」

「あの…ゾンビ。仲間達と作戦立てて、倒そうとしたって…話してくれたじゃない」

…あぁ…。

落とし穴作戦と…放火作戦のことか。

「見事に失敗に終わったがな」

おまけに、二度に渡る失敗のせいで、心が折れ。

こうして、屋上に逃げてきている。

そして、未だに屋上に引きこもり続けている。

それなのに、みらくは。

「挑戦したことが偉いんだよ…。私なんて、戦おうって気もなかったんだもん」

「…結果が全てだ。いくら挑戦しても、失敗したんじゃ意味がない」

「そうかな。結果的には上手く行かなくて転んじゃっても、それって悪いことじゃないと思うよ」

「何故?」

「だって、転んだってことは前に進もうとしたってことでしょ。偉いよ」

…成程。哲学的だな。

そんな風に考えたことはなかった。

俺はいつだって、結果が全てだと思っていた。そういう価値観のもとで育てられたからだ。

いくら努力しても、血反吐を吐くほど一生懸命頑張っても。

結果が伴わなければ、何の意味もない。

過程なんてどうでも良い。ただ、結果が全て。

だからこそ、俺は作戦が失敗したことに絶望してしまったのだ。

結局自分は何一つ為せない、無価値な人間なんだって。

「私は…私は、ずっと怖かった。悪夢を見るようになってからずっと…」

「…」

「怖くて、一歩も動けなかった…。君達が校舎の外で、たくさん頑張って、作戦を立てて実行してる時に…。私はただ、ここで膝を抱いて震えてただけなんだよ」 

と言って、みらくはぎゅっと、固く自分の手を握り締めた。

「実を言うと、今だって怖いよ。戦うことなんて…とても出来そうにない。あのバケモノを見ると、怖くて、足が震えるの」

「…それは、無理もないことなんじゃないか?誰だって…」

「君の勇気が羨ましい。私も…君みたいになれたら良いのに…。そうしたら…戦えたかもしれないのに…」

「…」

俺みたいに…か。

それは初めて言われたな。

逆の台詞なら、何度も言われたことがある。「お前みたいにはなりたくない」とは。

まさか、夢の中で他人に羨まれるとは…。思ってもみなかったな…。

「現実の方でも、君はきっと皆の人気者なんだろうね」

「えっ」

「え?」

…皆の人気者?

…何だ、その冗談は。