神に選ばれなかった者達 前編

どうやら俺は、みらくにとって、全然話の合わない相手だったらしい。

が、みらくは飽きもせず、俺に色んな話をした。

みらくの話す話題は、俺にはほとんど分からないことばかりだった。

それでも、みらくとのほぼ一方通行の会話は、決して不愉快なものではなかった。

時折、そんな俺達の会話を中断するかのように、思い出したようにゾンビ共が現れ。

その度にみらくが怯え、怖がり、固まって。

その度に俺が、錐でゾンビを殺した。

それはもう、作業のようなものだった。





…これで、一体何匹目だろうか。

会話を中断するように現れたゾンビを、一突きにして殺した。

ピンク色の粘液が手に付着するのが、不愉快だった。

「…終わったぞ」

「…うん…」

ゾンビの粘液まみれの俺を見て、みらくはこくりと頷いた。

「…大丈夫か?」

「…それはこっちの台詞だよ。君こそ、大丈夫なの…?」

「別に…。…もう慣れた」

作業みたいなものだ。
 
ゾンビが出てきたら殺す。それを繰り返しているだけだ。

集団で襲ってくるならいざ知らず。

一匹ずつなら、錐という貧弱な武器しかなくても、何とかなる。

「…ごめんね、響也くん」

何故か、みらくは俺に謝罪してきた。

「何が?」

「いつも…手を汚させるのは君だけで…」

「あぁ、これ…。別に、拭けば良いだけだ」

俺は、自分の上着でゾンビの粘液を拭った。

どうせここは夢の中。朝になったら汚れは綺麗に落ちているのだから、気にすることはない。

しかし。

「そうじゃなくて…。…君にだけ戦わせてごめんね、ってこと」

「…あぁ…」

手を汚すって、そういう意味か。

「別に気にしなくて良い。俺がそうしたいからしてるだけだ」

「私がもっと…こんな怖がりじゃなくて、君と一緒に戦えるほど強かったら…」

「それは俺だって同じだ。戦いたくないからって、逃げてる」

だから、俺はここにいるのだ。

『処刑場』の仲間達は、こうしている今もこの校舎の何処かで戦っているだろうに。

俺はこうして、屋上に引きこもっている。

とんでもない臆病者。

きっと、彼らも呆れているだろうな。

もう響也に期待するのはやめよう。あいつは役立たずだ、ってな。

…いつものことだ。

我ながら情けないとは思うけど、どうしても…一歩を踏み出す勇気がない。

それなのに。

「でも、君は戦ってるじゃない」

「…え?」

「倒してくれたでしょ。そこにいるゾンビ達」

と言って、みらくはゾンビの死体を指差した。

まぁ…あれらは…。

「その点私は…何の役にも立ててない。この夢の中に来てからずっと…」

「…」

…どうやら、みらくはそのことを随分と気にしているらしい。