神に選ばれなかった者達 前編

「それは…また…何種類もあるのか?」

「勿論。今悩んでるのは、新作のピンクチューリップと、ブロッサムピンク、そから、ピンクダリアとピンクマリーゴールドの4種類で…」

また4種類か…。

しかも、また全部ピンク…。

「ピンク…好きなのか?みらくは…」

「え?だって、春と言ったらピンクでしょ?」

まぁ…春のイメージカラーではあるが…。

と言うか、マリーゴールドって普通、黄色い花じゃないのか?何なんだピンクマリーゴールドって。

語感だけで商品名を決めてないか?

ピンクのマリーゴールドも、探せばあるのかもしれない。

「それから、ネイルと、リップグロスも欲しいんだよねー。ほんと、新作コスメがどれも可愛くて…」

「…済まないんだが、一つ聞いて良いか?」

「ん?何?やっぱりピンクチューリップが良いと思う?」

いや、そうではない。

ただ、さっきから気になっていることが一つあるだけだ。

「…こすめ、って何なんだ?」

「…そこから…?」

済まない。実は言葉の意味を理解していなかった。

「お化粧品のことだよ」

「あぁ…化粧品…」

そりゃ知らない訳だ。生まれてこの方使ったことがないからな。

…化粧品か…。

「…別に何色でも良いんじゃないのか?」

「君ねぇ…。自分が使わないからって、適当過ぎない?もうちょっと真面目に考えてよ」

「それは済まない。でも、実際誰がどんな色の化粧をしているかなんて、案外人は見ていないものだぞ」

「…え?」

気にしているのは自分だけ、というやつだ。

「例えば、道ですれ違っただけの相手が、まぶたに何色の化粧品を塗っていたかなんて、いちいち覚えてないだろう」

「…」

「瞬間的に『良いな』、『綺麗だな』と思っても、五分後には忘れている。案外そういうものだ。だから気にせず、好きな色を塗ればい、」

「あのねぇ…。君って人は…デリカシーってものがないね」

申し訳ない。

俺はデリカシーがないらしい。

「そういうことじゃないの!見てる人はちゃんと見てるわよ。君が気にしてないってだけで」

「…そうなのか…?」

「そうだよ。クラスメイトと『そのアイシャドウ良いね』とか、『そのチーク何処で買ったの?』って話をするもん」

成程。女性同士だとそういう話題になるらしい。 

俺が男だから知らないというだけで。

「君の学校でも、女の子は大抵メイクしてきてるでしょ?」

「…?そうなのか?人の顔なんかじろじろ見ないから、全然気づかなかった」

「…ほんとにデリカシーってものがないね、君は…」

そうか。それは申し訳ないことをした。