神に選ばれなかった者達 前編

…ある日の夜。

その日も俺は、早速襲ってきたゾンビを一匹、退治し。

返り血ならぬ、返り粘液にまみれながら、屋上に座っていた。

…なかなか異様な光景だな。

だが、それももう慣れ始めた。

人間、何事にも慣れてしまう生き物だと言うが、あれは本当だな。

ただ、死の痛みに慣れることは、未だに出来ないが。

で、屋上でみらくと二人、毎晩何やってるのかという話だが。

別に何もしてない。ただ喋ってる。

「それでね、春の新作コスメが凄く可愛いの。アイシャドウがどれも良い色で…」

「…何なんだ?アイ…シャドウって」

直訳すると…目の、影?

目の影って何なんだ。目の隈という意味か…?

「もー。まぶたに塗るコスメのことだよ」

「そうか…」

「で、新色が4種類合って、どれを買うか悩んでるの」

「何色と何色があるんだ?」

4色…。

赤と青と、黄色と緑、みたいな?

「サクラピンクとローズピンク、ピンクピーチとパールピンクの4種類なの」

ドヤァ、と謎のドヤ顔で教えてくれた。

…それは4種類と言えるのか?

「…全部ピンクじゃないか」

「そりゃピンクだけど…どの色が一番良いかなーって」

「…どれも同じじゃないのか?」

要するに、それ全部ピンクなんだろう?

しかし、俺の発言はみらくを呆れさせたようで。

「分かってないなぁもう。同じじゃないの」

…怒られた。

「サクラピンクは淡い桜色のピンクで、ローズピンクはそれよりもっと濃い、赤に近いピンクなの。ピンクピーチはその中間で、ちょっとオレンジっぽいピンク色で、パールピンクはラメが入ってるのよ」

…とのこと。

「…ラメ?」

「キラキラしてるの」

「ふーん…」

色々あるんだな。

ピンクも一種類じゃないらしい。それは悪かった。俺の勉強不足だ。

「で、どれにしようかなーって思って。やっぱり春らしいサクラピンクが良いのかなー」

「…」

「でも、私淡い色ってあんまり似合わないんだよね。かと言ってローズピンクは、可愛いけど、ちょっと派手だし…。間を取ってピンクピーチにすべきかな」

「…」

「ラメが入ったパールピンクも捨て難いよね。前評判だと、一番人気なのはサクラピンクらしいんだけど…」

「…」

「…ねぇ、聞いてる?さっきからずっと黙ってる」

「…いや…。自分にはよく分からない分野の話に、口を出すのも何だと思ってな…」

「もー。ちゃんと聞いてよ」

聞いてはいるぞ。…アドバイスはまったく出来ないというだけで。

「それから、新しいチークも欲しいんだよね。春の新作」

「…そうか…」

まだあるのか?まだ続くのか。その話。