神に選ばれなかった者達 前編

…そういう訳で、その後どうなったのかを話さなければなるまい。

翌夜から、俺達とゾンビ達の攻防戦が始まった。

次の夜も、また次の夜も…ゾンビ達が、屋上にやって来るようになった。

一度「人間がここにいる」という気配を察知すると、ゾンビ達も学習するらしい。

前も思ったことだが、意外とあいつら、ゾンビの癖に頭良いんだな。

しかし、幸いなことに、屋上にゾンビ達が大挙して押し寄せる…という事態には、至っていなかった。

というのも、どうやらゾンビ達は相変わらず、「階段を上る」という行為が苦手らしい。

その為、苦労して階段を上り、屋上まで辿り着くゾンビの数は、それほど多くなかった。

毎晩のようにゾンビ達は屋上にやって来るが、その数は精々、2〜3匹程度。

この数なら、俺の錐で充分対応可能である。

ゾンビが現れる度に、みらくは恐怖と怯えで固まっていた。

そしてその間に、俺がゾンビの頭を錐で突き刺して殺す。

また平穏が訪れる。

ひたすら、その繰り返しだった。

こんなものは、所詮その場しのぎの延命でしかない。

一匹ずつちまちま潰したって、ゾンビ軍団の総数にさしたる影響はない。

それは分かってる。百も承知だ。

だけど、それが何だと言うのか。

例えその場しのぎに過ぎなくても、今、生きているのだ。

明日どうなるか分からなくても、でも、今確かに生きている。

みらくが生きてそこに居て、俺もその隣に居る。

それ以上、大切なことなんて何もなかった。

これもまた、ある種の現実逃避なのだろう。