神に選ばれなかった者達 前編

そういう意味では、この武器は非常に扱いが難しい。

適切に扱えるように訓練すれば、強力な武器になるのは間違いないんだが…。

少なくとも、今は無理そうだな。

まずは着火の仕方を調べることから始めるべきだ。

「そうか…。じゃあ、やっぱり椅子の方が良かったな…。もう消えちゃったけど…」

「それは済まなかったな…」

「…何で君が謝るの…?」

昼間、その椅子を回収してしまったのは俺だからな。

やっぱり、そのまま置いておいた方が良かったか。

「それにしても…何で私は、こんな使いにくい武器なんだろうな…」

「さぁ…。それは…」

それを言うなら、俺だって。

何故自分が錐を持ってるのか、未だに分かっていないが。

「もっと強い武器だったら良かったのに…」

「手榴弾は充分強いんじゃないか?」

「だけど、扱い方が分からなかったら意味なくない?」

それは…まぁ。

馬鹿とハサミは使いよう、っていう言葉もあるくらいだし。

錐と手榴弾も使いよう、なんじゃないか?

果たして、それでゾンビを倒せるのか…。

…と、考えていた、その時だった。

屋上に繋がる扉が、ガンッ!!と鳴った。

俺とみらくは、驚いて扉の方を向いた。

…この音って、まさか。

俺は思い出した。

この悪夢に転送された時、教室の扉を何度も殴り壊されたことを。

「ひっ…!?」

みらくは、怯えてその場に凍りついた。

俺は、咄嗟に錐を手に取った。

その判断は正しかった。

ガン!ガン!と何度も殴りつけるような音がして。

ついに、バキッ、と扉が壊された。

そこに現れたのは、勿論。

「グォォォォ…」

口から、涎のような赤い血をしたたらせ。

一匹のゾンビが、屋上に入ってきた。

…なんてことだ。

人の気配を嗅ぎ付けたのか。俺とみらくがここにいると?

しかし、考えるのは後だった。

まずは、命を守るのが先だ。

遮るもののない屋上では、身を隠してやり過ごすことも出来なかった。

そして。

「いや…。いや、来ないで…」

ゾンビの姿を見たみらくは、酷く怯え、青ざめていた。