神に選ばれなかった者達 前編

もしこれを武器として使うのなら、試しに使ってみれば良いのだろうが…。

…手榴弾を試しに爆発させる、なんて危険極まりない。

お互い、使い方を知っている訳でもないのに。

「危険過ぎる。試すのはやめておこう」

「そうかな…。でも、これでゾンビを倒せるなら…」

本当にこれでゾンビを倒せるなら、試してみる価値はあるかもしれないな。

しかし…。

「これが本当に手榴弾だとして、仮に使い方が分かったとしても、恐らく、この手榴弾一個で倒せるのは、精々2、3体くらいが関の山だろう」

「えっ…そうなの?爆弾なんだから、もっと派手に…ドカーン、って…」

そうは行かないだろう。例え最新式の手榴弾だとしても。

「手榴弾は爆発そのものよりも、爆発と同時に周囲に撒き散らされる破片で敵を殺傷するんだ」

「…」

「だから、手榴弾一個でゾンビを一掃しようと思ったら、相当密集しているところに投げる必要がある」

結局、俺達が最初にやろうとした落とし穴作戦と、発想自体は同じだな。

ゾンビを一箇所に集めて、身動きが取れなくなったところを手榴弾で…。

という作戦なら、考えられなくもないが…。

「それに、仮にゾンビが密集する状態を作れたとしても、その場所に、的確に手榴弾を投げるのは難しいと思うぞ」

「何で?投げるだけでしょ?」

それはまぁ、投げるだけなんだが。

「離れている距離にもよるが、目標の場所に物を投擲するのは至難の業だ」

「…そうなの…?」

…いまいちイメージ出来ていないようだな。

なら、試してみよう。

俺は、みらくから数メートル離れた位置に、自分の錐を置き。

屋上に転がっていた、小さな小石をみらくに渡した。

手榴弾より小さいが、小石でも、イメージくらいなら出来るだろう。

「この石を、あの錐に向かって投げてみろ」

「えっ?そんなの簡単だよ。えいっ…」

みらくは、小石をひょいっと投げたが。

みらくの投げた小石は、錐の遥か手前にコツン、と落ちた。

「あれっ…?」

「…もう一回やってみるか?」

「う、うん」

みらくは小石を拾い直し、もう一度投擲。

しかし、今度は目標の錐の、かなり左側に落ちた。

「えぇっ…?ちょ、もう一回」

三度目の正直とばかりに、ひょいっと小石を投げる。

しかし今度は、錐の遥か向こうに落下。

「む、難しいっ…。何で?」

「…難しいだろう?」

野球選手でもなければ、狙った場所に的確に投擲するのは難しいものだ。

余程運動神経か良いなら、出来るかもしれないが。

何回か練習すれば、出来るようになる可能性はある。

でも…。

「『本番』のチャンスは一度きりだ。お前が手榴弾を上手に投擲出来るまで、ゾンビ共は待ってくれないだろうからな」

「う…」

それに、『本番』の時は練習とは違う。

ミスることが出来ないというプレッシャー。

手榴弾のピンを外してから爆発するまでのタイムラグも、考慮しなければならない。

下手をしたら、爆発するのはゾンビではなく、自分だ。