神に選ばれなかった者達 前編

「知ってるの?響也くん。これ、何?」

「知らないのか…?」

習わなかったか?歴史の授業で。

「何処かで見た事はあるような気がするけど…。何なのかまでは分かんないよ」

「これは、恐らく手榴弾だ」

「しゅ…りゅー、だん?」

本当に知らないのか。

とはいえ、俺も詳しくは知らないが…。

「爆弾だよ」

「えっ…。これ、爆弾なの?」

ぎょっとするみらく。

知らずに持ってたのか?

この様子だと、夢の世界に来てから、一度も使用したことはないらしいな。

賢明な判断だったかもしれない。

使い方も分からないのに下手に触って、暴発したら大変なことになるところだった。

「歴史の教科書に載ってなかったか?」

「お、覚えてないよ。そんなこと…。…これが爆発するの…?」

「恐らくな」

これが玩具じゃなければ、の話だが。

「ピカって光るやつ…?よくアクション映画とかで、『目を塞げ!』って言って投げるやつ」

「アクション映画を観たことがないから、何とも言えないが…。それは閃光弾じゃないのか?」

「えっ。違うの?」

俺もそこまで武器に詳しい訳じゃないから、知らない。

「じゃあ…放射能?とかが出る爆弾…?」

「それは原子爆弾だ。手榴弾で放射能は出ない」

「あ、そっか…」

混乱のあまり、みらくの頭の中で、様々な情報が錯綜しているらしいな。

「そうじゃなくて、戦争中に歩兵が敵兵に投げたり、自決用に使う武器だ」

「あっ…。そっか。なんか、昔の映画で観たことあるかも。ばんざーい、って言いながら投げるの…」

「そう、それだ」

確か、ピンを抜いて、岩とか、地面とか、硬いものに叩きつけて。

数秒後に爆発して、破片が周囲に撒き散らされる…。

昔読んだことのある教科書に、そんな説明が書いてあった気がする。

「嘘…。じゃあ、これ本当に爆発するの…?」

「…使ってないんだろう?一度も」

「うん…」

…じゃあ分からないな。本当に爆発するのかどうか。

「た、試した方が良いのかな…?」

「そもそも、使い方は分かるのか?」

「えっ…。…分かんない…」

だよな。

実を言うと、俺も分からない。

丸い輪のようなものがついている。これが多分、ピンなんだろうが。

これを外して…。岩に叩きつけて…。ってやるのだろうか。

だが、みらくのウエストポーチに入っている手榴弾には、何やら小さなレバーのようなものがついている。

何だ、このレバー。

俺が知っている手榴弾の知識は、あくまで、歴史の教科書に、コラムとして載っていたもの。

あくまで、昔の戦争中に使われた武器だ。今ここにある手榴弾と使い方が同じである手榴弾とは限らない。

それに、本当に爆発するのかどうかも分からないからな…。