神に選ばれなかった者達 前編

…そもそも。

「みらくの武器は何なんだ?」

「へ?武器…?」

「生贄になった者は、皆、何かしら武器を持っているらしいんだが…。…俺の、これのように」

と言って、俺は錐を差し出してみせた。

みらくは、その錐をじっと見つめた。

「…これ、何なの?裁縫道具…?」

裁縫道具…リッパーのことか?

「これは錐だ。工具だよ」

「何で工具なんか持ってるの?」

それを聞かれると、俺も返答に困る。

…何で俺の武器は、錐なんだろうな?

もっと強そうな武器…。機関銃とか、戦闘機だったら良かったのに。

いや待て。仮に戦闘機があったとしても、操縦法が分からない。

高性能な武器を宝の持ち腐れにしてしまうくらいなら、分かりやすく相手に突き刺すことが出来る錐の方が、実用性があると思おう。

「自分でも分からないが…。使いやすさはピカ一だ」

「そうかな…?やたら射程が短いような気がするけど…」

「確かにそれは欠点だが…。…しかし、椅子を鈍器代わりに使うのも、射程という観点からするとかなり短いと思うぞ」

「ま…まぁ、そうね…。うん…」

お互い、武器の射程の短さに苦労しているようだな。

だが、よく考えたら、空音いそらが持っていた鉄パイプも、射程は短いよな。

一方で、ただ殴りつけるだけなら、かなりの殺傷能力がある。

「みらくは最初、何を持ってたんだ?近くに武器がなかったか?」

昨日使っていた椅子は、あくまで昨日、雨野リリカが屋上に捨てたことにより、出現したものだ。

みらくが一週間前からこの屋上にいたのなら、その時既に、彼女は何らかの武器を所持していたのでは?

彼女だけの武器が…。

「武器…なのかは分からないけど、これを持ってるの」

と言って、みらくは自分のウエストポーチを指差した。

やたらとメルヘンなキーホルダーがじゃらじゃらとついた、ピンク色のウエストポーチである。

「…何が入ってるんだ?」

「これ」

「…!」

みらくがウエストポーチを開け、その中に入っていたものを見て、俺は思わず言葉を失った。

…これって…。

「響也くん…これ、何に使うものか知ってる…?…使ったこと、ある?」

「…ない…」

と言うか、こんなものを現実で持っていたら、相当クレイジーだぞ。

そこに入っていたのは、小さなゴルフボールくらいの、楕円形の球体。

それが3つ。

歴史の教科書に、イラストが載っていたのを思い出した。

まさか、実物を目にすることになるとは。
 
…いや、ここは夢の中だから、実物とはまた違うのかもしれないが…。