神に選ばれなかった者達 前編

その日、ビニールシートはさすがに、学校には持っていかなかった。

代わりに、学校に着いてすぐ、屋上に向かった。

するとそこには、昨日、一晩中雨晒しになっていた俺の机と椅子が、そのまま放置されていた。

結局、一晩中外に出されていたらしい。

…が、今は何となく、誇らしい気分だった。

だって、この机と椅子が、夜蛾みらくを救ったのだ。

それ以上、大切なことはあるまい。

…まぁ、同じ椅子で、肩を砕かれたのだが。

それはそれ。

俺は、濡れてじっとりとした机と椅子を、えっちらおっちらと運んだ。

俺が持って返ってきた机と椅子の有り様を見て、雨野リリカは何故か得意げだった。

しかも、にやにやしながら絡んできた。

「あれ?どうしたの?床に座るの、やめたの?」

あぁ。さすがにな。

古典の教師に怒られなかったら、多分今日も床で授業を受けてたと思う。

「なんか濡れてない?そんな椅子に座って大丈夫なの?」

…大丈夫、ではないが。

夢の中では天気なんか関係ないが、現実ではずっと雨が降っていたせいで。

俺の机はぐっしょりと濡れ、おまけに枯れ葉や落ち葉がくっついていた。

なかなか貫禄のある姿である。

このまま座るのは、ちょっと遠慮したい。

だが、マシじゃないか。枯れ葉くらい。

ゾンビの粘液が付着してる訳じゃないんだから。

可愛いものだ。

しかし何がおかしいのか、俺の机の有様をみて、にやにや笑う雨野リリカ。と、その取り巻き。

「昨日みたいに、床に座った方が良いんじゃない?」

「お似合いだもんねー、ホームレスみたいでさ」

「きったなーw」

今日も好き勝手、言いたい放題だな。

まぁ好きに言ってくれて結構だが。

これだけは言わせてもらおう。

俺は、真っ直ぐに雨野リリカに向き合った。

「…は?キモいんだけど。何こっち見てんの?」

「昨日…」

「は?」

「昨日、俺の机と椅子を屋上に捨ててくれて、ありがとう」

この時の、雨野リリカの顔。

きょとんとして、完全に虚を突かれた様子。

は?何言ってんの?とでも思ってるんだろうな。

「…は…?何言ってんの…?」

ほら。

何…と言われても、こっちの話、なんだが。

「ともかく、お前に助けられた。だから礼を言いたかっただけだ」

「…意味分かんないんだけど、何なの…?」

意味は分からなくて良い。俺が分かっているのだから。

自分の如何なる行為が、どんなきっかけとなって人を救うか分からない、ということだな。

あまりに意表を突いてしまったせいか、調子が狂ったらしく。

その日はもう、何の嫌がらせも受けなかった。

まさか雨野リリカも、嫌がらせをして感謝されるとは思ってなかったんだろうな。